プロ野球亭日乗BACK NUMBER
世界で通用する内野手育成のために、
“基本至上主義”から脱却せよ!
posted2015/01/16 10:40
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
AFLO
PL学園から1987年のドラフト1位で中日入りした立浪和義内野手のデビューは、高卒内野手としては前代未聞のものだった。
プロ1年目の開幕戦にいきなり「2番・ショート」で先発フル出場。6月までは3割近いアベレージを残し、最終的にも110試合に出場して打率は2割2分3厘ながら22盗塁、21犠打でチームのリーグ優勝に貢献した。
立浪を「高卒1年目」ながらショートというポジションで使えたのは、一にも二にも守れたことだった。ただ、シーズンが夏場に差し掛かった頃に、当時評論家で、後に中日のヘッドコーチとなる一枝修平さんが、こんなことを言っていたのも鮮烈に覚えているのである。
「あの子(立浪)は確かにうまいけどな、一番の欠点は基本に忠実すぎることやな。おそらく少年野球からPL(学園)でも、ゴロの捕球はボールの正面に入ってグラブを下から出せと徹底的に教えられとるんやろな」
それはゴロ捕球の基本中の基本である。
ただ、高校野球やアマチュアではそれだけで通用しても、プロの世界では逆に基本がマイナスになることもあるという。
「プロのスピードについていくためには、ときにはムリにボールの正面に入ろうとせずに、バックハンドでさばくことが合理的なこともある。でも、そういう局面でもあの子は、ムリやりボールの正面に入ろうとして間に合わなくなる。いくら注意しても体がそう覚えているから、なかなかできへん」
日本ナンバー1の鳥谷にも、よいオファーはなかった。
日本人の内野手、特に二遊間を守る選手がメジャーでなぜ通用しないのか、ということを考えていたときに、フッと思い出したのが、この立浪のエピソードだった。
阪神からメジャー移籍を目指していた鳥谷敬内野手が、年明けに移籍を断念して阪神に残留することを発表した。
日本における鳥谷は、打てて守れて走れる上に、10年連続全試合出場記録を継続中など、身体の強さも持ち合わせる現時点でナンバー1の遊撃手であることは誰もが認める存在だ。
しかしこの鳥谷にも、メジャーからはあまりいい契約は提示されなかったという。トロント・ブルージェイズなど数球団が興味は示したものの、オファーの内容はメジャーの保証もなく2年目のオプションは球団側が持つなど、いつでも“クビ”にできるものだった。それだけ日本人野手への評価は低いということなのだろう。