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「マンCのランパード」いまだ健在。
変わらぬ得点感覚と試合を決める力。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2015/01/12 10:40

「マンCのランパード」いまだ健在。変わらぬ得点感覚と試合を決める力。<Number Web> photograph by AFLO

出場時間あたりのゴール数はアグエロ、ヤヤ・トゥーレを上回りチーム最高のフランク・ランパード。まさにマンCの切り札というに相応しい活躍を見せている。

マンCの手法は裏技? 裏口?

 もっとも、結果的に所属先となったマンCは、ランパードの得点力を後半戦で更に必要とすることになるだろう。攻守両面で中盤の核となっているヤヤ・トゥーレを、コートジボワール代表として出場するアフリカ選手権で2月上旬まで失うからだ。

 攻守両面で完全な代役となることは難しいが、チームにはフェルナンドとフェルナンジーニョという中盤の守備役がいることから、ランパードを得意の攻撃に注力させることが可能。事実、前半戦でのランパード戦力化は、トップ下を含むゴールを意識させた起用法の賜物だ。

 一方、他クラブではランパードのマンC残留を歓迎しない向きもある。開幕前に「期間延長となればモラル違反」と言っていたのは、アーセナルのアーセン・ベンゲル監督だが、マンCのランパード獲得は悪しき傘下クラブ間取引の前例となりかねない。NYシティからのレンタルではなく、マンCから直接に獲得を打診されていれば、昨季末まで「チェルシー以外のクラブでプレミアを戦うことはあり得ない」と公言していたランパードは、契約に二の足を踏んでいたと思われる。レンタルでの獲得が決まると、その期間がシーズン末までに延び、今や来季の再レンタル契約説まである。その対象がキャリアの終盤ではなく最盛期にある選手であれば、厳しく問題視されていたはず。マンCは賢い「裏技」補強ではなく、汚い「裏口」補強を行なったと叩かれていたに違いない。

NYシティからは非難の声があがったが……。

 年齢は30代後半であっても大物には変わりのないランパードに待ちぼうけを食わされたNYシティでは、実際に非難の声が上がっている。現地のサポーター団体からは、「ファンが激しい怒りを覚えるのは当然。彼らが不満を訴える手段として取る行動を支持する」との声明が出された。年始の公式サイト上でランパードのネーム入りTシャツが半額以下に値下げされていた事実は、人気激減の証拠とも受け取れた。

 しかしながら、イングランドにおける「シティのランパード」周辺は、思いの外に静かだ。選手の移籍や登録に関するルール違反があったわけではなく、モラル面にしても、当事者のマンCとランパードを責めるのは難しい。

 マンCは当初から傘下クラブからの「大物拝借」を意識していたのかもしれないが、そうだとしても、グループステージ突破を狙う今季前半のCLで、ランパードの経験値は捨て難いという程度の期待に基づくものだったのではないだろうか? それが、王座奪回を狙うプレミアでも「ゴールゲッター兼ポイントゲッター」として使えると分かれば、「今季末まで」と欲も出ようというものだ。

 ランパード自身も、降って湧いたプレミア残留話に乗っただけのこと。NYシティがMLS初参戦へのプレシーズンを開始するまでには入団決定から半年間あり、元々必要だったその間の調整をプレミアとCLのピッチで行なえるという、願ってもない話だったのだ。続くレンタル契約延長は、前半戦に示した実力で手にした勲章だと言える。まだ戦力として通用すると確信できたはずの当人にすれば、拒む理由などない。ランパードは、チェルシーの英雄である以前に現役のプロサッカー選手なのだから。

【次ページ】 エモーショナルな再戦は1月31日に。

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