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苦境を越え達観した老兵、ピアスの新天地での役割。
~ウィザーズをNBA王者に導けるか~ 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2014/12/24 10:00

かつての愛称「THE TRUTH」そのままに、ウィザーズで誠実なプレーを続けている。

かつての愛称「THE TRUTH」そのままに、ウィザーズで誠実なプレーを続けている。

 思えばポール・ピアス(ワシントン・ウィザーズ)のNBA人生は、'08年に優勝したこと以外は、思い通りに行かないことの連続だった。上位指名を期待していたNBAドラフトでは、結局10位まで待たされた。しかも、ロサンゼルスでレイカーズ・ファンとして育った彼を指名したのは、よりによって憎きボストン・セルティックスだった。

 それでも伝統あるチームの一員として誇りを持つようになり、骨を埋める覚悟で低迷期も支えたが、引退が近づいた'13年、再建計画にあわないとブルックリン・ネッツにトレードされた。1シーズン後の'14年夏にFAになると、親友のケビン・ガーネットと共に残留して戦い続けようとしたが、サラリー削減を考え始めたネッツからは契約のオファーもなかった。

 その後、数あるオファーの中からウィザーズと2年契約を交わしたのは、セルティックス時代のチームメイトで、当時ウィザーズのアシスタント・コーチだったサム・カセルに説得されたからだった。信頼するカセルの言葉に耳を傾け、ジョン・ウォールやブラッドリー・ビールら若手の力を信じ、候補にも考えていなかったウィザーズ入りを決めた。もっとも、その直後にカセルはウィザーズを離れてクリッパーズのアシスタント・コーチになるというオチがついていたが。

ウィザーズの若手にチャンピオンの経験を伝える使命。

 紆余曲折しながらも、37歳のピアスに悲壮感がないのは、運命に抗うことなく、その時々の状況を自然体で受け入れてきたからなのかもしれない。

 心の傷となったセルティックスからのトレードにしても、「セルティックスは僕がいなくなった後もセルティックスであり続ける。それはピアスのセルティックスではない」と達観したことを言う。

 新しい環境における自分の立ち位置や役割を認識することにも長けている。ウィザーズでは、チームの将来を支える若手こそが主役で、彼らから主役を奪うつもりはないと強調する。そのうえで若手たちを叱咤激励し、チャンピオンの経験を伝えることが役割だと自負する。

 好調ウィザーズは序盤戦、東カンファレンスの首位を争い、注目されている。だからこそ、ピアスは手綱を引き締める。

「僕らはまだ何も証明していない。チームとして、フランチャイズとして、敬意を得るところから始めなくてはいけない」

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