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FAの動向と投高打低の変質。
~レッドソックスが岩隈を狙う理由~ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2014/11/29 10:40

FAの動向と投高打低の変質。~レッドソックスが岩隈を狙う理由~<Number Web> photograph by AFLO

日米野球にも参加したマリナーズの岩隈久志。2013、2014年で計29勝を挙げた右腕を、レッドソックスがトレードで獲得するとの報道も出ている。

速球派投手たちの早過ぎる引退の陰には……?

 が、ここへ来て潮目が変わっている。象徴的な例は、ジョシュ・ベケットやロイ・ハラデイの早すぎる引退であり、ヨハン・サンタナやジャスティン・ヴァーランダーやマット・ケインの急速な衰退だ。

 彼らの共通点は、パワー・ピッチングだ。年間200イニングス以上を速球で押しまくり、打者を力でねじ伏せる。見るからにパワフルだし、メディアの注目も受けやすい。ただ、豪快さの裏にはもろさが付随する。ハイスクールのころから速い球が求められる傾向も、選手生命を短くしがちだ。マーク・プライアーの引退や松坂大輔の大リーグ撤退なども、同根の現象といってよいのではないか。

 その反面、柳に雪折れなしを地で行く投手たちの姿も眼を惹く。35歳を過ぎて30ゲーム前後に先発し、なおかつ水準以上の成績を残す。マーク・バーリー、黒田博樹、R・A・ディッキーが代表格だが、彼らは全員、速い球で勝負せず、打者の手もとで動く球で勝負している。頭も柔軟だ。

先発の成績を、ブルペンが上回るチームの躍進。

 もうひとつ顕著なのは「ブルペンで勝つ」傾向だ。2014年に覇を争ったジャイアンツやロイヤルズが典型的な例だろう。両チームの先発陣の勝敗を合計してみると(レギュラーシーズン+ポストシーズン)126勝123敗という数字が弾き出されるのに対し、両軍の救援投手陣は74勝33敗(ポストシーズンだけなら14勝2敗)という好成績をあげているのだ。たしかに、マディソン・バムガーナー(ジャイアンツ)という超絶的エースを唯一の例外として、両チームとも輝かしい先発投手は擁していなかった。5回までをなんとかしのぎ、あとは強力なリリーフ陣で抑え込むというパターンは、もはや主流の座を占めつつあるといっても過言ではない。

【次ページ】 レッドソックスの岩隈狙いは正解といってよい。

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