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プライドと現実の狭間で揺れる思い。
江尻、高橋信、藤井のトライアウト。  

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byGenki Taguchi

posted2014/11/10 11:30

プライドと現実の狭間で揺れる思い。江尻、高橋信、藤井のトライアウト。 <Number Web> photograph by Genki Taguchi

日本ハムから巨人を経て、オリックスで3年目のシーズンを過ごし戦力外通告を受けた高橋信二。今季は出場が10試合、6安打だった。

藤井秀悟「トライアウトでみなさんに見てもらえれば」

「今日はとにかく、自分が投げられることを見てもらいたかったんで」

 そう語気を強めていたのは、江尻と同じ37歳のDeNA・藤井秀悟だった。

 移籍2年目の昨年は開幕投手を任されるなど6勝をマークしたが、今季は一軍での登板はゼロ。「ひじに不安がある」というレッテルを貼られたまま戦力外になったことに対してどうしても納得がいかなかったのだと、藤井は自分の口で説明する。

「僕はここ10年、怪我をしたことがないんで。でも、『ひじが悪い』と思われていたからピッチングを見てもらえなかったというか。自分が『ちゃんと腕を振って投げられますよ』と何回言ったところで埒があかなかったんで、トライアウトでみなさんに見てもらえれば、ということで来ました」

 この日の最速は132km。全盛期に比べれば10km以上遅い。トライアウトでの成績にしても、打者ふたりを内野ゴロに仕留めたが、2四球と決して満足のいく投球内容ではなかった。「フォアボールを出してしまった選手も打ちたかっただろうし、そこは申し訳なかったです」と藤井は気遣ったが、自身の結果については前向きにこう振り返っていた。

「スピードがそんなに出るわけではないんで判断が難しいとは思いますけど、しっかり腕を振って投げられましたし、不安要素と思われていた部分は払拭できたと思っています」

ベテランに付きまとう、厳しい現実。

 トライアウトで最低限のパフォーマンスが披露できたといっても、伸び代が見込まれる若手と違い、「引退と隣り合わせ」と認識されがちなベテランは、立場上、どうしても厳しい現実が付きまとう。

 もし、経験と実績がある彼らが、戦力外通告後、すぐに引退を決断すればコーチなど指導者として第二の人生も開けたのかもしれない。それでもトライアウトを受けたのは、「ベテランと呼ばれる年齢までやってきた」という矜持が自身を刺激するからだ。

「そりゃあそうでしょ! そんなこと考えたらここには来ないし、ベテランだとしてもやれると思っていますから」

 オリックスの高橋信二が断言する。

 近年は代打など控えに甘んじてきたが、日本ハム時代は4番としてリーグ制覇にも貢献した。その36歳のベテランが、トライアウトで印象づけたかったことはただひとつ。「しっかりとスイングするところ」だった。

【次ページ】 高橋「自分だって負けるわけにはいかない」

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