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出雲駅伝はいかにして中止されたか。
学連と出雲市の思惑のズレが原因?
posted2014/11/08 10:55
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph by
Nanae Suzuki
「大会中止が決定しました」
私たち中継解説者に正式通達があったのはスタート3時間前。実は、朝7時の段階で一旦「開催決定」という連絡が来ていた。ほっと一息ついた矢先だっただけにガックリ。
大学三大駅伝のひとつ「第26回出雲全日本大学選抜駅伝競走」が台風の影響で中止になった。テレビ中継されるロードレースが、悪天候で中止になるのは前代未聞である。フジテレビの中継解説のために集まった瀬古利彦氏、藤原新氏と私の3人はホテルのロビーに居合わせ、やるせない気持ちでお互い顔を見合わせた。
確かに、滞在していた出雲市街は台風の影響で雨風がひどかった。しかし、やろうと思えばできそうな感じでもあった。このくらいの天候のなかでトレーニングしたことは数え切れないほどある。
頭の中はやる気モードで一杯!
「激しい強風のなかのレースを学生ランナーがどう対処するか」
「風向きによっては一区が最後まで団子状態になること必至」
「ひょっとしたら優勝に大番狂わせがあるかも」
などと、密かにコメントのキーワードをメモしていた。
学連と出雲市で一致しなかった思惑。
そもそも、レース予定日の10月13日(月)は、1964年東京オリンピックの開会式にちなんで施行された体育の日。開会式がその日になった理由は「晴れの特異日」だという説もある。
しかし今年は“晴れ”どころか、大型の台風19号が九州から四国、近畿地方にかけて横断し、日本列島が大荒れになった。
駅伝開催地の出雲を直撃したわけではない。しかし、「暴風・波浪警報」が出されたことが、結果的に大会中止決定の最大要因となった。
駅伝レースは、日本学生陸上競技連合と出雲市の共催である。
学連側は是が非でも開催したかった。台風が直撃しそうもないことを受け、朝の段階で「開催決定」したのも学連側の強い意向の表れだと思う。
しかし、現実には「暴風・波浪警報」が出されていた。地元警察から「警察は万が一の災害対策優先で動くので、駅伝の道路交通規制には協力できそうにない」とプレッシャーをかけられていた出雲市側は、端から開催不可能と考えていたという。