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巣鴨のとある弁当屋の“ヤクルト魂”。
「仕事中に試合を見るために……」 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byHidenobu Murase

posted2014/10/06 10:40

巣鴨のとある弁当屋の“ヤクルト魂”。「仕事中に試合を見るために……」<Number Web> photograph by Hidenobu Murase

店主・峰岸さんの明るい笑顔。注文から提供まで非常にテキパキとスピーディーなため、野球中継をじっくり見ることはなかなか難しい。庚申塚店は都電荒川線、庚申塚駅からすぐの場所にある。

神宮以外の球場は、本拠地のファンで埋まっている!

「僕は監督が野村さん、キャッチャー古田さんの時代からずっとスワローズが好きで応援してきたんですよ。まぁ……今年もダメでしたけどねぇ。最近は特にまずいよなぁ。神宮の集客も阪神・広島頼みだし、ヤクルトってチーム名に“東京”を謳ってはいるものの、あんまり“やってる感じ”が見えてこないじゃないですか。今年できたグッズショップだって、これまでは12球団で唯一本拠地に固定の店がない球団だったんですからね。

 お客さんはどこのファンですか? ああ、横浜。いいですね。最近のハマスタはお客さん入ってますよね。8月にやったスターナイト。あれもほぼ一周横浜ファンで埋まりましたよね。そうですよ、東京ドームだって福岡だって、広島も甲子園も北海道も、本拠地のチームのファンで350度ぐらい埋まるじゃないですか。でも神宮はそれがない。

 今までは当たり前だと思っていたけど、これはヤクルトが異常だったんです。来場者にボブルヘッド人形を配ってもね、受け取った人がそのまま平気でレフトスタンドに行ってしまうような姿を見ているとね……なんというか、ヤクルトファンとして悔しいですよ!」

 完全にスワローズ魂に火がついたかのように、スワローズに対するアツイ思いを話してくれた峰岸さん。しかしその話の分だけ、チキン南蛮弁当が冷めてしまっていたことは果たして知っていたのだろうか。おいしかったけど。

ヤクルト中継の意図はなんなのか……。

 また別の日。ヤクルト弁当の店はその日もやっぱりヤクルト戦を中継していた。筆者は山賊焼き弁当を注文しながら、わずか数分の待ち時間しかない弁当屋で、1試合2~3時間はかかる野球中継を流す意図はなんなのかを考えた。

 言動から推測する。店主は、おそらく客にちゃんと試合を見せようとなんて思っていない。それよりもチーム名に“東京”の冠を付け、球団でも“つばさんぽ”などの都民に訴えかけるイベントをやりながら、ちっともヤクルトを応援する人が見えてこない“東京人”に対しての反発というべきか。

 現状に業を煮やした店主が、一人でも多くの人にヤクルトの魅力を伝えるべく、こうして表通りにむけて街頭テレビを設置し、わずかな時間でもスワローズを見て好きになってもらおうという啓蒙活動。はたまた都民の潜在意識に直接ヤクルトを植え付けようというサブリミナル攻撃か。

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