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ルーニーの主将就任は契機となるか。
新生マンUの新シーズンは前途多難。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2014/08/23 10:40

ルーニーの主将就任は契機となるか。新生マンUの新シーズンは前途多難。<Number Web> photograph by Getty Images

昨季は不調のマンUで孤軍奮闘したものの、チームはまさかの7位でCLどころかELをも逃したルーニー。英国の、そしてマンUの至宝は主将としてどんな働きを見せるのだろうか。

新監督が認めた、新戦力の必要性。

 それにしても、最前線に残っていたのは特別にスピードがあるとは言えないマタ。そのやや後方にいたエルナンデスは、お膳立てを必要とする点取り屋で、独力でゴールを陥れるタイプではない。

 3名の中で最も深い位置まで下がっていたルーニーが敢えて前線に残り、マタが中盤に下がるべきだった。マンUの攻撃は、負傷したリンガードに代わってドリブル突破が得意なアドナン・ヤヌセイが入った後でも、トランジションで勢いを欠いた。

 チームとしての低調の理由には、ファンペルシの他にもスタメン候補に故障者がいたこともあげられる。中盤のマイケル・キャリック、右ウィングバックのアントニオ・バレンシア、最終ラインのジョニー・エバンスとルーク・ショーの4名だ。

 しかしたとえこの4名が揃って先発していても、ファンハール就任で盛り上がった王座奪回を狙うには心許ない。新監督自身が「より優れた戦力が必要だ」とプレミアでの黒星デビュー後に認めている。

香川真司の出場機会に立ちはだかる、マタという壁。

 これは、その開幕戦をベンチで終えた香川真司にとっては厳しい発言だ。

 アタッキングサードで見せる攻撃センスは秀逸な香川だが、アウトサイドをこなす突破力と中盤中央に適応する守備力が足りないプレーメイカーは、3-4-1-2の中ではトップ下しか可能性のあるポジションがない。その競争相手は、プレミアの実積で明らかに香川を上回り、かつファンハールがファンペルシとルーニーと共に前線の主軸と認めているマタだ。

 さらに、香川がベンチを温める状況が続く要素はまだある。3バックの基本化に割いたプレシーズン中の時間の多さと、今夏の移籍市場における残り時間の少なさを考えれば、新監督はシステム再変更ではなく、香川には不利な3バック制の機能改善を意図した上で「より優れた戦力」を獲得すると思われるからだ。

 移籍市場での火急の課題は、前回の本コラムでも触れたようにベテラン2名が抜けたCBと、アンデル・エレーラの加入だけでは不安なセンターハーフの補強だ。

 スウォンジーに敗れた3日後には、新たな3バックの担い手として、スポルティング・リスボンからのマルコス・ロホ獲得がクラブ間で合意に達したと発表された。ロホは攻撃意欲旺盛なアルゼンチン代表の左SB兼CBだ。時を同じくして、同国代表MFのアンヘル・ディマリアの名前も改めて浮上。レアル・マドリーではウィンガーのイメージが強いが、豊富な運動量を生かし、執拗に守り鋭く攻めるセンターハーフとしても一級品だ。

【次ページ】 「キャプテン・ファンタスティック」になれるか。

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