ブラジルW杯通信BACK NUMBER
W杯前の闘莉王の言葉が頭をよぎる。
本当の「日本のサッカー」とは何か?
posted2014/07/11 11:55
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
Getty Images
日本代表がブラジルから帰国して4日後の7月1日、日本サッカー協会の原博実専務理事兼技術委員長は記者を前に、W杯での日本の戦いを総括した。その中で、気になる一言があった。
「この4年間は、自分たちでボールを動かして相手を崩していくサッカーをやっていこうとしていた。決して間違った方向性だったわけではなかったが、世界の舞台ではもう少しいろんな展開に応じた戦い方が必要だった。
W杯のほかの試合を見ていても、やりたいサッカーがあっても割り切った戦い方をしている国もあった。日本は自分たちのサッカーにこだわったけど、それもやりきれなかった。力がなかった。ある時間帯では、南アフリカ大会のような守る戦い方も必要だった。強豪国はそうした引き出しを持っている。今後の監督人事については、自分たちで崩していくサッカーは継続しつつ、なおかつ日本人の良さを活かせる指導者を探している」
この中で筆者が気になったのは、“日本人の良さ”という言葉だ。
漠然とした表現だが、これこそが日本がW杯を毎回戦うごとに自問自答しては、いまだに明確な答えを見出せずにいるテーマである。
W杯での戦いを見て、頭に浮かんだ闘莉王の言葉。
現地でザックジャパンの取材を終え、真っ先に頭に浮かんだのが大会前に聞いていた田中マルクス闘莉王の言葉だった。
「誰もが理解しないといけないのは、まだチームでも個でも日本と強豪国には歴然とした力の差があるということ。みんな口ではわかっていると言うけど、それを態度や行動でも謙虚に示さないと。
でも、何もそれはネガティブに振る舞うことではない。自分たちの立ち位置を正確にわかっていないと、勝負には勝てない。なんで前回のW杯で決勝トーナメントに進出できたか。それは失点が少なかったから。だから勝つために、もっと守備を意識することの何が悪いのか。その守備意識に、今伸びている攻撃的な要素を加えていけば、それこそが間違いのない成長だと言えると思う。
それがいきなり自分たちの特長、スタンスは攻撃的だ、ということだけを強調してしまうと、それはまた振り出しに戻ってしまう。自分たちの立ち位置から理想まではどれぐらいの距離にあるのか。その距離が測れないのであれば、理想も何も達成できない」
結果的に、闘莉王が話していたとおりの結果となってしまった。日本の力は、まだ世界レベルの中を順調に勝ち進んでいけるレベルではなかった。ただファンや国民だけでなく、我々メディアの人間も、代表が押し出した攻撃的なスタンスに最後は期待をかけた。結局、これは日本サッカー全体が世界レベルを見誤った結果の敗北なのかもしれない。