プロ野球亭日乗BACK NUMBER
9番起用の理由は「合う打順がない」?
巨人・長野久義に必要な“状況判断”。
posted2014/05/30 10:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
打席に入るときの心構えとして、最も大切なことは何なのか?
元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜氏に、こんな質問をしたことがある。
「そりゃ状況判断でしょう!」
即座に返ってきた答えがこれだった。
「バッティングっていうのは、シチュエーションによって求められるものが変わってくる。だからまず、自分がその打席で何をすべきなのかをしっかり把握してから、打席に入ることだよね。そうするとボールの待ち方とか、打席へのアプローチも必然的に変わってくる。それが結果を生むことにつながるんです」
もちろん、本塁打を打つ、安打を打つ、というのは打者にとって、いかなる状況でも求められている答えである。ただ、この状況判断という言葉に含まれているのは、ある局面では松井氏でも「決める」意識より「つなぐ」意識を強く持つということである。それは進塁打であったり、ある場面では相手投手に球数を投げさせるために自分のヒッティングゾーンを極端に絞ることでもある。
10回のうち7回ある凡退を、意味のあるものに。
3割打者でも10回のうち7回は失敗するのが、野球というスポーツなのだ。状況判断をしっかりした打撃を目指していけば、その7回の失敗のうちいくつかは、意味ある凡退に変えることができる。
それができるかできないか。チーム競技としての「野球」では、ある意味、選手の価値はそこで決まる部分もある。
5月26日の巨人対日本ハム戦(東京ドーム)。3-3の同点で迎えた9回無死一塁で、巨人・原辰徳監督は長野久義外野手に替えて代打に松本哲也外野手を起用した。この100%送りバントの場面で、7回にバントを失敗していた長野に代打を送ったわけである。
「何とかスコアリングポジションにということを考えると、松本の方がその部分でチーム力が上がると思った」
これが監督の決断だった。