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教本とは程遠い新鋭ゴルファー2人。
一流の条件は「見せかけでない個性」。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byZUMA Press/AFLO

posted2014/04/02 10:40

教本とは程遠い新鋭ゴルファー2人。一流の条件は「見せかけでない個性」。<Number Web> photograph by ZUMA Press/AFLO

インドネシアPGA選手権では、一時首位に立つなど、存在感を放った時松隆光。今季のツアーでどんな戦いを見せてくれるのか。

「源蔵パット」の異名を取ったパッティング。

 ジュニア時代からナショナルチームの一員に加わってきたが、成長過程では、いわゆる基本とは一線を画すスタイルに、懐疑的な目を向ける大人たちがいた。だがパットでは「この方がラインが見えやすい」、ショットやアプローチでは「(ベースボールグリップの方が)フィーリングが出る。ずっとこれでやってきたんで、普通に握ると変な感じがする」と、ひたすらに自分の感性を磨いた。

 頑固さとわがままは、他人にすれば紙一重。だから多くは語らず、答えは結果で示してきた。現在の隆光の名前はプロ転向後に、「勝負運が付くように」と地元福岡のお寺から頂戴して改名したもの。もともとの本名は源蔵(げんぞう)という。そしてアマチュア界で好成績を出すようになると、その独特のパッティングスタイルは「源蔵パット」の異名を持つほどになり、周囲は次第に納得していった。

 同い年には、昨年初勝利を挙げた川村昌弘がいる。自身も変則スイングを貫いてプロの道に進んだ川村にとって、時松は良き理解者。高校生の時にマレーシアで行なわれた団体戦では「現地の食べ物が口に合わなくて、部屋で一緒にひたすら硬いパンをかじっていた」(川村)という仲だ。「自分も変わっていましたけど、ゲンちゃん(時松)はさらに上を行く変わり者」とも語っている。簡単に周囲の助言には流されずに成功体験を重ねるうちに、2人の信念は一層強くなっていったのである。

小学6年時の骨折が、大堀の全てを変えた。

 一方、昨年の日本アマチュア選手権王者で、この春に大阪学院大を卒業したプロ1年生、大堀の自我の芽生えは、あるアクシデントが発端だった。

 彼の場合も、特徴的なスイングにまず目が行く。アドレスの時から曲がった左ひじが体の外側に突き出ていて、この微妙な角度が保たれたままフォローを終える。

 独特な腕の使い方は、小学6年生の時の事故が影響した。雨上がりの公園で鬼ごっこをしていたときに、ジャングルジムから滑り落ちて左ひじを骨折した。「11月20日。誕生日だったんです。すごい話でしょう?」と笑うが、このバースデーの苦い記憶は、大堀に我が道を歩ませるきっかけになった。

【次ページ】 左手に残る後遺症、レッスン本は使えない。

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