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ソチ五輪でのメダルラッシュの秘密!?
「マルチサポートハウス」が大活躍。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2014/04/01 11:35

ソチ五輪でのメダルラッシュの秘密!?「マルチサポートハウス」が大活躍。<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

ノルディック複合の日本人選手として20年ぶりとなる銀メダルとなった渡部暁斗。持久力、瞬発力などで高度なコンディショニングが試されるこの競技において、マルチサポートハウスの果たした役割は非常に大きかったという。

 2月に行なわれたソチ五輪で、日本は金1、銀4、銅3の計8個のメダルを獲得した。冬季五輪では1998年の長野大会の計10個に次ぐ2番目、海外で行なわれた大会では史上最多のメダル数である。

 好成績をあげた陰には、大きなバックアップがあった。それが「マルチサポートハウス」である。選手村村外に設置された施設で、選手団へのさまざまなサポートを行なうためのものだ。メダル獲得を目指し、文部科学省が実施しているマルチサポート事業の一環であり、日本スポーツ振興センターが委託し運営にあたった。オリンピックでは、史上最多の計38個のメダルを獲得した2012年のロンドン大会で初めて設置され、ソチ五輪が2度目、冬季五輪では初めて設置された。

 ソチでは、会場エリアがスケート競技の行なわれる沿岸部とスキー雪上競技の山間部の2カ所、約60kmと大きく離れていることにあわせて、それぞれの選手村の近郊のホテルを借り上げ、2カ所のマルチサポートハウスが設けられた。それぞれ30名前後の常駐スタッフにより、沿岸部は2月1日、山間部は2月3日にオープンし、大会終了の2月23日まで運営された。利用者の数は、のべ1309人、1日平均では約57人にのぼったという。マルチサポート事業の河合季信ディレクターによれば、「8名のメダリスト全員と、入賞者のうち約9割が利用しました」と言う。

日本食も選手のコンディショニングに不可欠。

 では、具体的に、マルチサポートハウスでは、どのようなサポートが行なわれていたのか。

 大きな柱のひとつが、選手のコンディショニングやリカバリーの支援である。そのために行なわれたのが、「コンディショニングミール」「リカバリーボックス」の提供だった。コンディショニングミールとは、ハウス内で試合に向けての準備を促す食事のことだ。河合氏はこう説明する。

「試合に向けてしっかり準備をしていただくことが第一の目的です。冬の競技の場合、複数の日にわたって試合に出場する選手が夏より多く、試合と試合の間での回復が重要となります。また、大会の前の週までワールドカップなど長期遠征をしてから現地に入ってくる選手たちも少なくありません。炭水化物や鉄分が不足していたりするのでしっかり摂れるようなメニューを用意しました。また、スキーのジャンプは体重によって使用できる板の長さが変わってしまいますから、体重のコントロールが大事です。慣れ親しんだ食べ物なら、どれくらい食べれば体重を増減できるか分かります」

 そうした栄養面の配慮に基づき、例えばさばの味噌煮、ひじきといった選手村にはない数々の和食メニューも含め、多数のメニューが準備された。

【次ページ】 山岳エリアではスキー板の整備が出来る準備を。

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