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5年で4人ベテラン捕手獲得の阪神。
GMが就任しても、迷走は終わらない。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/01/17 10:40
昨季は108試合に出場、DeNAの正捕手を務めた鶴岡一成。DeNA退団の挨拶後に、涙を浮かべて新たな決意を語っていた。
すべては、2010年の城島健司獲得で始まった。
そもそもの元凶は、2010年の城島健司獲得にあった。
狩野恵輔という期待の若手がいながらも、城島獲得に踏み切ったのは、大きな決断だった。
もっとも、この補強策を結果論で問うのはフェアではない。
経営戦略にしても、どのような組織の決定にしても、大事なのは成功・失敗ではなく、その後にどう反省し、問題を処理したかにある。ライバルである巨人がFAでの補強ばかりに走ってチームを一つにまとめられなかった過去を清算し、補強と育成を上手くミックスさせたチームを作ることができたのは、過去の失敗に学んだからだ。
城島の獲得によって、若い選手の活躍の場をなくしてしまったことは変えることができない過去だとしても、未来を変えることはできたはずだった。しかし、阪神は迷走を続けたのだ。
藤井、今成、日高、鶴岡と毎年他球団から捕手を獲得。
城島以降も、阪神は毎年他球団から捕手を獲得している。
'11年にはFAで藤井彰人を獲得、'12年にはトレードで日ハムから今成亮太、'13年にはオリックスからFAで日高剛、そして、今季は鶴岡を獲得したというわけである。実は、ドラフト以外での捕手獲得数は、阪神が他球団を圧倒している。
今成は年齢が若く、トレードでの補強だったから理解できても、城島、藤井、日高、そして、今回の鶴岡は同世代(正確には、城島と藤井が同級生、日高と鶴岡はその1学年下)であり、このような偏ったチーム編成はいかにチームの編成方針にビジョンがないかを示している。
しかも、これらの補強が中村GM就任前後でまったく変わっていない。
過去を変えるための中村氏の就任であるはずが、いまだに色が見えてこないというのは、過去から何も学べてないように思えて仕方がない。厳しい年俸査定を断行するなどして、球界の革命児ともなりつつある中日の落合博満GMとは、雲泥の差といえるのではないか。