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災い転じて福となるか。
エディが見せた変わらぬ意志。
~ラグビー代表監督の劇的な復帰~ 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

PROFILE

photograph byNobuhiko Otomo

posted2013/12/14 08:00

来年も引き続きジャパンの指揮を執るエディ。「世界のトップ10入りが目標」と改めて明言。

来年も引き続きジャパンの指揮を執るエディ。「世界のトップ10入りが目標」と改めて明言。

 スタスタと歩いて入ってきたカリスマ指揮官の姿に、会見場を埋めた報道陣から、期せずして拍手が沸き起こった。杖も使わず、足を引きずる様子もない。椅子を引いて席に座ると、水のペットボトルを自分でグイと開けてがぶりとのみ込む。その姿は、いつものエディ・ジョーンズそのものだった。

 10月15日に、頭痛などを訴えて都内の病院に向かい、軽度の脳梗塞と診断されて入院し、集中治療。11月2日のオールブラックス戦と、続く欧州遠征では指揮を離れた。「軽度」と発表されても、病名が病名だ。スポーツ界では、生死の境を彷徨った長嶋茂雄、イビチャ・オシムの例が頭を過ぎる。ファンもメディアも、落ち着かない日々を過ごした。

 だが11月29日、日本ラグビー協会で行なわれた退院報告会見に現れたエディの姿は、病み上がりには見えなかった。「アリガト」と日本語の挨拶で始まった会見では、医師から食事や移動など何か制限されているかを問われ「何もない」。痺(しび)れはあるかと聞かれれば「ラグビーを見ているときだけ」と切り返す。

スコットランド戦をPCで見て「現場でコーチしたい」。

 日本代表の試合は、病室に持ち込んだPCで見たという。

「フラストレーションばかり」。PC観戦の感想を問うと、エディは笑った。

「スコットランドには50分間は良い試合ができたけれど、それを80分間続けなければいけない。NZ戦を見ても、日本はオーソドックスではない方法を追求しなければならないと痛感した。そして、自分が現場でコーチしたいと強く思った。今後は1分1秒も無駄にできない。私はやっぱりラグビーが大好きです」

 以前のエディは、遠征中も時間が空けば選手やスタッフと面接を重ね、移動中もPCで世界の試合映像を研究するなどワーカホリックそのものだった。

「これからは、睡眠をしっかりとりたい。前は身体が硬かったけど、ストレッチを重ねたおかげで、手が足先に届くようになった(笑)。身体にいいことをしたい」

 エディの不在は、タフな日程で強敵との連戦を重ねた日本代表の選手たちに精神的な自立も促した。そして、エディ本人も身体と頭をいたわることを覚えてくれれば……この病もきっとプラスに働く。

 エディの血色の良い顔を見て、35分もの熱弁を聴いて、そんな気持ちになった。

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