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<男子ゴルフ界の勢力図> 「遼世代」の台頭は、何をもたらしたか。 

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三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

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photograph byTaku Miyamoto

posted2010/11/25 07:29

<男子ゴルフ界の勢力図> 「遼世代」の台頭は、何をもたらしたか。<Number Web> photograph by Taku Miyamoto

右上から時計回りに池田勇太、松山英樹、藤田寛之、片山晋呉

力を出し切れていない矢野東や片山晋呉ら中堅選手たち。

 例えば、41歳の藤田寛之のように、パワーや勢いだけでなく、14本のクラブを駆使し、トータルバランスで勝利を掴む中堅・ベテラン選手の技がキラリと光っているのも確かだ。

 強い、という言葉に2種類の意味合いがあるとすれば、伸び盛りで勢いがあって、スランプを知らない時期の強さと、経験を積み、失敗の痛さや肉体的な衰え、故障を克服しながら積み上げたからこそ備わってくる強さがある。

 ゴルフゲームは、その両方を受け入れてくれるスポーツだ。派手で、眩しいばかりの輝きを放つのが前者だとすれば、いぶし銀のような奥深い光沢を醸し出すのが後者だろう。

 今年のこれまでの戦いぶりを見るかぎり、'08年に賞金ランキング2位となった矢野東や、昨年のマスターズで日本人最高位の4位となった片山晋呉は、本来の実力をいまひとつ出し切れていない。

 矢野は、世界へ飛躍したいという目標を立てたときに「何が不足しているか自分ではわかっている」といい、まず肉体を鍛え直した。その上で、次にスイングの精度を高めようとした。 だが、あまりにも精緻を求めすぎるあまり、スイングへのこだわりが、ときにゲーム性や勝負の執念に優先してしまうことがある。経験を積んだ中堅選手が陥りやすい「スイング病」の罠に、矢野も悩まされているのではないか。

キャリアを重ねるごとに課題がどんどん増えてくる。

 片山は「勝つために何が足りないかと、いつも引き算で考えて埋めていく」というタイプの選手。彼もまたマスターズ4位以上の成績を得るために、足りないものを探し求めている旅の途中であろう。

「年齢、キャリアを重ねるごとに、処理しなければいけない情報、課題が、どんどん増えてくる」とは、ジャンボ尾崎の言葉だ。

 肉体の管理から始まり、経験してきたことが逆に慎重に、丁寧にというふうになり過ぎてしまうこともあるのがゴルフの難しいところだ。一方で、ウッズがデビュー当時によく言っていた「トライ・アンド・ウイン」という勝利への一途さ、恐れを知らない冒険と勇気だけでは収まらないのも確かである。

 一直線な若さの勢いと強さ。そして、智慧を駆使して巧みな技量で一打一打を紡ぐ強さ。そのふたつの強さを、うまく織りなした者こそが、本物の輝きを見せるはずである。

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