Sports Graphic NumberBACK NUMBER

<日本のテクニシャンが認めた業師> 乾貴士のマニアック解説 「ブンデスリーガの上手いヤツ」 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

photograph byTomoki Momozono

posted2013/08/29 06:01

小柄ながら稀有なボールテクニックを備え、ドイツでも
活躍し続ける乾貴士。意表を突くプレーでファンを
魅了する天才がブンデスのライバル達の技術を解説する。

 派手なドリブル突破や、ゴールに吸い込まれるような柔らかいシュートは、間違いなく乾貴士の持ち味だ。だが、この小柄な技術屋が他の選手と最も異なるのは、トラップという“基本技術”で観客を魅了できることではないだろうか。

 昨季、第3節のハンブルガーSV戦で浮き球を足の甲で受け止め、その流れからゴールを決めると、フランクフルトのフェー監督は「あんなトラップ、見たことがない」と絶賛。今年2月の日本代表のラトビア戦では、DFからのロングパスを右足でキャッチし、「神トラップ」として話題になった。今オフのTV出演時には、内田篤人から「日本代表で一番うまいのはコイツ」と紹介された。

 速いわけでも、強いわけでもない。純粋なうまさで勝負する異能の選手だ。

 このフットボールセンスの塊のような乾から見ると、ブンデスリーガで“うまい”のは誰なのだろう?

 乾はゆっくりと考えてから言った。

「リベリー、ロッベン、ゲッツェ、ロイス。あのへんはみんなうまいですよね。ただ、あえて好きなタイプをあげると、マキシムかなぁ」

シュツットガルトのマキシムが秀でるボールタッチの「吸引力」。

 マキシム――と聞いて、すぐにシュツットガルトのルーマニア代表MFとわかる人は、かなりのブンデス通だろう。エスパニョールのユース出身で、今年1月にシュツットガルトに移籍した23歳だ。

「ボールを持ったときのタッチがいいんですよね。仕掛けたときもそうやし。めっちゃうまい。昨季の途中にいきなり現れて、すごく印象に残ってます」

 マキシムのボールタッチの特徴は「吸引力」。磁石が付いているかのようで、ボールが離れそうになっても柔軟な足首で引き戻し、混戦から簡単に抜け出すことができる。

 マキシムの例からもわかるように、どうやら乾が重要視するのは、「ファーストタッチ」のセンスらしい。

「やっぱ、最初のボールタッチだと思うんですよ。柔らかさと止めどころ。自分はそこを見てます。たとえば、ボールを相手に取られへんところに置くのか、それともわざと足を出させるように置くのか。受けた瞬間にわかる。そういう駆け引きを見るには、リベリーが一番わかりやすいですね」

“講義”はさらに続く。

<次ページへ続く>

【次ページ】 185cmの長身で繊細な技術を持つドラクスラーに衝撃。

1 2 NEXT
1/2ページ

ページトップ