Survive PLUS ~頂点への道~BACK NUMBER
吉田麻也が痛恨の4失点を語った。
技術、集中力、そしてスアレス。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/08/19 12:10
ウルグアイ戦の前には「日本人やアジアのFWが持っていない感覚を持っている」とスアレスに対して誰よりも強い警戒心を持っていた吉田だったのだが……。
Number Webでは、雑誌と連動したウェブオリジナル企画
「Survive PLUS ~頂点への道~」として、Number本誌には
掲載されなかったエピソードや、取材の舞台裏などをお届けします。
第4回の今回は、コンフェデ杯から失点を続ける日本代表、
そのCBとして批判の矢面に立つ吉田の苦悩に迫ります。
何をやっても、うまくいかない。長い人生、誰でもどこかでそうした時期に直面することはあるだろう。
ましてや、国を代表する舞台に立つ人間ともなれば、自らの不調や不出来、停滞がより多くの人間からの不評につながってしまう。それが、代表選手の宿命だ。
いま、吉田麻也の信頼が、失墜しつつある。失点に絡むプレーが相次ぎ、日本代表のファンやサポーターからも、叱咤と落胆の声が多く飛んでいる。
コンフェデ杯同様、記者の前で冷静に取材を受け続けた吉田。
誰もが人の目から逃げ出したい状況であるにもかかわらず、吉田は試合後もメディアの前に立つことを止めず、言葉を絞り出し続けている。
6月、ブラジルで開催されたコンフェデ杯で苦い経験をしたときも、同じ姿勢を貫いていた。8月14日のウルグアイ戦後も変わりはなく、大勢の記者を前にしながら噴き出す汗をぬぐいつつ、冷静に声を発していた。
特に質問が飛んだのが、1失点目の場面だった。相手の苦し紛れのロングボールに対して、ウルグアイのエースのスアレスが反応。一気に吉田の背後の広大なスペースを突き、フォルランの得点に結びつけられた。
このシーン、吉田はスアレスよりも前の位置に立っていた。つまり、スピードで入れ替わられたというより、ボールが裏に出た瞬間、すでにスアレスが先手のポジションを取っていたことになる。吉田はその場面を、こう振り返る。
「オフサイドを取りに行ったというよりも、元々スアレスは僕よりも後ろにいたので、(ロングボールを)蹴られた時点でオフサイドかなと思った。そこは今ちゃん(今野)とのズレを修正しないといけない。そういうズレはもちろん試合の中で起こり得ることだけど、あまりにも多かったし、それがピンチにも直結していた。そこは直さないといけない」
最終ラインのズレ。このシーンだけでなく、試合をとおして何度もそれが見受けられた。その度に相手にスペースを突かれ、ピンチにさらされていった日本。吉田もその流れを食い止めることができず、相手の攻撃に飲まれていった。
3年近くもプレーしながら、なぜ守備の連係は深まらないのか?
2つのミスマッチが存在していた。
1つ目は、自分たちの連係不足である。
1失点目のDFラインの問題に留まらず、吉田たちはその他でも統率の取れない守備を露呈していた。センターバック間のズレ、サイドバックのイージーミス、ボランチの戻りの遅さなど、“組織で守る”ことを大前提としている日本にとって、それらは致命的なディフェンスの姿だった。
彼らは、もうかれこれ3年近くともにプレーしていることになる。いまさら連係不足だと言われても、そんな理由は通用しないと言われるだろう。
しかし、気になる点があった。それは、吉田を含めて、明らかに各選手たちのコンディションが悪すぎた点である。