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<3人の監督に連続取材> あなたにとって“交代”とは何ですか?~トニーニョ・セレーゾ×反町康治×西野朗~ 

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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photograph byAFLO

posted2013/08/02 06:01

なぜそのカードを切る? コンフェデにおけるザッケローニの采配を見て、
そう思った人は多いだろう。ザックの頭の中は、ザックにしか分からない。
しかし、監督という人種の思考回路は、監督に聞けば分かるかもしれない。
サッカーの基本的ルールである選手交代について、3人の監督に話を聞いた。

 3連敗を喫したコンフェデではザッケローニ監督の采配、特に交代が気になった。

 イタリア戦では前半で2-0とリードしながら、後半に逆転負けを喫した。メキシコ戦では、先制されて3-4-3に移行したが、流れを呼び込めず元の形に戻してしまう。

 考えてみれば、ザッケローニが交代によって流れを変えた試合は少ない。延長戦で投入した李忠成がボレーを決めた2011年アジアカップ決勝が印象深いが、それ以外に見当たらないのが現実だ。

 ザッケローニの交代は、なぜ当たらないのか。この疑問をきっかけに、監督たちが交代をどう考えているのか知りたくなった。交代はどれだけ勝敗を左右するのか。いい交代をするために、監督は何をしているのか。交代にテーマを絞って、経験豊富な鹿島アントラーズのトニーニョ・セレーゾ、松本山雅の反町康治、そしてガンバ大阪を10年間率いた西野朗にインタビューした。監督の頭の中を覗くことで、代表監督の選手交代について考えてみたい。

「交代の成否は選手層とチーム編成にかかってくる」

トニーニョ・セレーゾ Toninho Cerezo
1955年4月21日、ブラジル生まれ。'99年に監督デビュー。'00年から'05年まで鹿島を率い、就任1年目にJリーグ、ナビスコ杯、天皇杯の三冠達成。今季8年ぶりに鹿島の監督に復帰。

「あなたの交代の哲学を教えてください」

 アントラーズのクラブハウスに現われたセレーゾに単刀直入に尋ねると、彼は子どもを諭すように「ボールは丸くて、いろんな転がり方をするんだ」と喋り始めた。

「例えば日本の指導者は『ここにボールが入ったら、次はこう動け』というふうに教える。約束事を決めるのは日本文化の素晴らしいところだけど、サッカーは脳からいちばん遠いところにある足を使うスポーツだということを忘れてはいけないよ。選手がいつも、決められた通りにプレーできるとは限らないんだ。約束事に縛られると、選手が決められた動きをできなかったときに、本人や周りが慌てることになってしまう」

 セレーゾが説くのは、イレギュラーが相次ぐサッカーを約束事に落とし込むことの危険性だ。台本を完璧に覚えるだけでは、ゲームはできない。その場その場でアドリブができる感性を持たなければ、サッカーを知っているとはいえないのだ。

「交代の成否は選手層とチーム編成にかかってくる」とセレーゾは力説する。選手層と編成は、極論すればサッカーを知る選手が揃っているかどうか、と言い換えていい。

<次ページへ続く>

【次ページ】 セレーゾが印象深い交代は「ない」と言い放った理由。

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