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マンUのルーニー移籍騒動で見えた、
「マネーの威力」と「スターの権力」。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2010/10/27 10:30

マンUのルーニー移籍騒動で見えた、「マネーの威力」と「スターの権力」。<Number Web> photograph by AFLO

試合2時間前にルーニーが移籍志願の声明文を発表したブルサスポル戦で、残留を願うプラカードを掲げるユナイテッドサポーターの少年

ファンも、メディアも、そして本人も離別を覚悟した!?

 20日に出された本人による声明文は、クラブの姿勢を疑問視する内容といい、キックオフの2時間前という発表のタイミングといい、指揮官の逆鱗に触れて然るべきものだった。チーム内には「周りの実力を信用できない奴はチームの一員としてプレーするべきではない」と語ったパトリス・エブラを筆頭に、不快感を露わにする選手もいた。マンチェスター市内では怒り心頭のファンがルーニー邸を襲撃せんばかりの勢いだった。メディアの論調は、ルーニーがユナイテッドの選手としてピッチに立つことは二度とないだろうという線でほぼ統一された。

 当人も覚悟の上だったはずだ。“サー・アレックスには一生の恩を感じている。ユナイテッドのためにも、未来永劫、監督を続けて欲しい”という声明文の結びは、別れの言葉とも受け取れた。

 もしも、たとえばエブラのように、主力ではあるが代役の獲得がそれほど難しくはない選手が同様の謀反を起こしていれば、即刻ユナイテッドを追われていたことだろう。

年俸は大幅増。駆け引きに負けたのはユナイテッドだ。

 おまけにルーニーは待遇改善にまで成功した。

 契約延長前の年俸は推定で週給約1200万円(金額は税込み。以下同)。延長後の待遇は、基本給だけで週給2000万円を超え、成績に応じたボーナスなどを合わせれば週給3000万円に近付くと報じられている。当人にすれば、騒ぎを起こした価値は十分にあったというわけだ。

“プレーヤー・パワー”に端を発する騒動が「マネー」で解決された今回の一大事。「ここが自分に相応しい居場所だと痛感させられた」というルーニーのコメントで幕を閉じ、表面的にはクラブが選手にさらなる忠誠を誓わせたように映る。

 しかし、実際の勝者はユナイテッドではなくルーニーだったようだ。

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ウェイン・ルーニー
マンチェスター・ユナイテッド

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