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マンUのルーニー移籍騒動で見えた、
「マネーの威力」と「スターの権力」。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2010/10/27 10:30

マンUのルーニー移籍騒動で見えた、「マネーの威力」と「スターの権力」。<Number Web> photograph by AFLO

試合2時間前にルーニーが移籍志願の声明文を発表したブルサスポル戦で、残留を願うプラカードを掲げるユナイテッドサポーターの少年

移籍をぶち上げた狙いは週給2000万円のギャランティ?

 クラブが「去る者は追わず」とばかりに早期売却の道を選んでいたとしたら、その理由はチームのモラル面への悪影響を最小限に抑えるためではなく、最大限の移籍金収入を確保するために他ならなかった。ユナイテッドは2004年に約36億円で買って育てたルーニーの価値を、現在は約2倍になっていると見込んでいたという。しかし、ルーニーは再来年の夏には契約満了。つまり、フリーでの移籍が可能になるため、それに向け徐々に“評価額”は目減りしていくことになるのだ。

 移籍先の選択も決め手は資金力になると思われた。買い手は巨額の移籍金に加えて、高額の年俸を負担しなければならなかったからだ。ルーニーは手取りで週給2000万円レベルの待遇を狙っていたと言われる。今年から所得税率の上限が50%に引き上げられた英国内のクラブであれば、週給換算で約4000万円もの資金を用意しなければならない。必然的に候補は、世界有数の大富豪を後ろ盾に持つマンチェスター・シティとチェルシー、所得税率の低いスペインのレアル・マドリーとバルセロナなど、一握りのビッグクラブに限られた。イングランドでは、ルーニーの海外流出を避けたい気持ちと当人のプレー・スタイルから、アーセナルへの移籍が妥当だという声も強かったが、残念ながら、移籍金と年俸の双方で非現実的と言わざるを得ない状態だった。

“移籍通告”から一転、5年間の契約延長で元の鞘に。

 最終的には、22日に2015年までの契約延長で合意の運びとなり、上手く元の鞘に収まった格好だ。ルーニーと笑顔のツーショットで契約締結を世に告げたファーガソンは、「ウェインは私とチームメイトに謝罪した。サポーターに対しても罪をつぐなっていく覚悟がある」と語っている。だが実際には、ルーニーという選手の才能の大きさの前にクラブが折れたと考えられる。

 ルーニーと言えば、18歳でエバートンから引き抜かれたその日から、ファーガソンが「クラブの将来」と見定めていたユナイテッドの至宝だ。

 クリスティアーノ・ロナウドが抜けた昨季は、34得点を叩き出す大活躍。国内の年間最優秀選手賞に輝き、いよいよCFとしての才能が開花したと絶賛された。まさに、名実ともにチームの主役となったのだ。

 だからこそ、“Uターン”が許された。

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ウェイン・ルーニー
マンチェスター・ユナイテッド

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