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<現地取材&最新インタビュー> 高原直泰 「韓国で取り戻した笑顔」 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

PROFILE

photograph byTsutomu Takasu

posted2010/11/02 06:00

ドイツで勇名を馳せた越境者の星は、母国で力を発揮する機会を奪われ、
海を渡る決意をした。復活を期す場所は、己を欲してくれた隣国のクラブ。
未知なるリーグで、流浪のストライカーは再び輝きを放とうとしている。

 10月9日、Kリーグ、水原(スウォン)対全南(チョンナム)戦。

 2002年日韓W杯の舞台にもなった水原のスタジアムは、1万人ほどの入りでやや空席が目立つ。特に、全南サポーターは大きな応援旗が2本立てられた付近に、30名ほどが分散して座っているだけだ。

 グラウンド上では、韓国らしい演出もあった。ハーフタイムに、日本でも話題の人気アイドルグループKARAが登場し、「ミスター」など2曲を披露した。8月のFCソウル戦でもハーフタイムに登場し、高原直泰のゴールと水原の勝利を導いた。そのため、KARAのメンバーである「ハラ」と高原の「原」を掛け、彼女たちが来ると高原がゴールを決めて勝つという“ハラ伝説”が生まれた。勝利の女神の登場に、スタンドのボルテージは一気に上昇した。

芝の剥げたピッチで繰り広げられた「シルム」さながらの肉弾戦。

 一方、ピッチは部分的に芝が剥げ、デコボコがスタンドから確認できる。Jリーグで見慣れた青く、整備されたピッチとは雲泥の差だ。その上で伝統の格闘技「シルム」さながらの激しい肉弾戦が繰り広げられていた。

 センターFWとしてスタメン出場した高原も、まるで背後霊のように付きまとう相手DFの厳しいチェックに跳ね飛ばされ、何度も芝を舐めさせられた。時折、キレの良い動きを見せるものの前線で孤立し、味方の援護はほとんどなかった。そして、後半37分、高原は交代を告げられた。

10月9日の全南戦、見せ場は作れなかったが、荒れたピッチの上を縦横無尽に走り回った

「今、最高に楽しいっすよ」

 前半19分に元中国代表DFリ・ウェイフェンが挙げたゴールによって1-0で勝利した後、チームメイトと肩を組んでミックスゾーンに現れた高原は、満面の笑みを浮かべて、そう言った。センターFWにとっては、ボールに触れる回数もチャンスも少なく、厳しい試合だったはずだ。それだけに、高原の言葉は少し意外だった。

 韓国に渡って、2カ月半。アルゼンチン、ドイツというサッカー大国で5年半プレーし、3カ国目の海外となる韓国に何を求めてやってきたのか。いったい、何が彼に「楽しい」と言わしめているのか。高原の清々しい表情の理由が知りたかった。

<次ページへ続く>

【次ページ】 水原への移籍に際して、ただひとつこだわったこと。

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