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オールスターとサプライズ。
~遅咲き選手に注目したいMLB球宴~ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2013/06/29 08:02

オールスターとサプライズ。~遅咲き選手に注目したいMLB球宴~<Number Web> photograph by Getty Images

今季一気にブレイクしたカーペンター。カーディナルス快進撃の立役者の一人だ。

 2013年のオールスター・ゲームが近づいてきた。今年の開催地は、メッツの本拠地シティフィールドだ。ゲームが行われるのは7月16日だが、ファン投票は4日の真夜中に締め切られる。

 毎年のことだが、この人気投票が妙な顔つきをしている。知名度と実績がごたまぜになり、思いがけない選手が上位に来たり、上昇株が無視されたりするのだ。

 とくに割を食うのは、知名度のあまり高くない実力派の選手だ。いいかえれば、去年まで飛行機のエコノミー席に坐っていたのに、いつの間にかビジネスクラスの座席を与えられたような選手。こういう選手は、得てして票を集めにくい。ブランド信仰の力は侮りがたいし、どうせまぐれだろう、という猜疑的な眼はこの世界に付き物だ。まして、ファン心理のあやふやさを思えば、人気が浸透するにはどうしても時間がかかる。

 だが、一流ブランドの競演だけではオールスター・ゲームは成立しない。突如出現した新人や、遅咲きの実力派、さらには臥薪嘗胆の苦労人が交じってこそ、このイヴェントは興味深いものになる。では、今年はどんなサプライズを見られるのか。

6球団を渡り歩いたスクータロが最初で最後の球宴に!?

 中間経過を見ていると、毎年かならず、競争の激しいポジションがある。

 今季は、ナ・リーグが捕手と二塁手と第2、第3の外野手。ア・リーグでは、捕手と第3の外野手が接戦状態を呈している。

 なかでも興味深いのは、ナ・リーグ二塁手の三つ巴の争いだ。

 6月23日現在、人気投票の首位を走るのはブランドン・フィリップス(レッズ)の260万票である。2位はマーコ・スクータロ(ジャイアンツ)の227万票。3位はマット・カーペンター(カーディナルス)の225万票となっている。

 このなかで知名度が抜群に高いのは32歳のフィリップスだ。メジャー生活12年で3割を打ったことは1度しかないが、平均打率は2割7分を超え、オールスターにも2度出場した経験がある。今季も、打率こそ2割6分5厘にとどまっているが、打点60が光る(前を打つジョーイ・ヴォットや秋信守の出塁率が4割を大きく超えている)。

 スクータロの場合は37歳という高齢が眼を惹く。デビューは26歳。いわゆるジャーニーマンとして12年間で6球団を渡り歩いてきたが、オールスターには1度も出場していない。ただ、どういう風の吹き回しか、打率は2011年ごろから急に上がってきた。球宴に出られるとしたら、これが最初で最後のチャンスかもしれない。

【次ページ】 遅咲きの上昇株はオールスター出場で一気にブレイク。

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