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伝説の“金網”を復活させた『VTJ』。
男たちは「格闘技の首都」を目指す。 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2013/06/30 08:01

伝説の“金網”を復活させた『VTJ』。男たちは「格闘技の首都」を目指す。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

王者対決を制した堀口(写真左)は、「UFCなどもっと上の舞台に行けば、(自分は)もっと強くなりますから。次はアメリカに行きたいと思っています」と宣言。

 昨年末、“伝説のイベント”が帰ってきた。'90年代の日本格闘技界に大きなインパクトを与えた『バーリ・トゥード・ジャパン』のリニューアル版『VTJ』だ。

『バーリ・トゥード・ジャパン』はヒクソン・グレイシーを初来日させたことで知られるイベント。佐藤ルミナ、エンセン井上ら“修斗四天王”が主力となった時代には、アメリカやブラジルの強豪たちと対抗戦を行なっている。

 復活版『VTJ』も、見据えるのは海外だ。かつて“グレイシー”や“バーリ・トゥードという試合形式”と向き合ったように、現在は“対アメリカ”、“ケージでの勝ち方”に取り組む。試合場はケージ、ルールはアメリカと同じで、階級もポンドで区切られる。

 アメリカで、そしてUFCで勝てる日本人選手を発掘・育成することをテーマに掲げた『VTJ』。6月22日、TDCホールで行なわれた第2回大会のメインイベントでは、修斗世界王者・堀口恭司とパンクラス王者・石渡伸太郎が135ポンド(61.2kg=バンタム級)で対戦した。

金網を味方につけた戦法で勝利を呼び込んだ堀口恭司。

 試合は、最終5ラウンドまでもつれるシーソーゲームになった。空手をベースにする堀口が遠い間合いからのミドルキック、パンチで攻め立てる。出血に追い込まれた石渡は臆せずに何度もタックルを敢行。一瞬の隙を突いてスリーパーホールドを極めかける場面もあった。だが、堀口は石渡が仕掛ける寝技からことごとく脱出。最後はパンチの連打でKOしてみせた。

 見逃せないのは、ケージならではの攻防が随所に見られたことだ。タックルを受けた堀口は、上体を金網に預けてディフェンス。一方の石渡は足を絡め、なんとか堀口の背中をマットに着けさせようとする。金網を使いながら倒すか、倒されるかの「ケージレスリング」は、世界で闘うための必須科目だ。また堀口は、ケージの広さを利用したステップワークで自分の得意な距離感を保つことで打撃をヒットさせている。デビュー当時から「目標はUFCのチャンピオン」と公言してきた彼は、ケージ仕様の闘いでバンタム級日本最強、つまり“日本代表”の座を勝ち取ったのだ。

ケージのエキスパートを養成する新人プロジェクトも。

 今大会のオープニングファイトでは、有望な新人にケージ経験を積ませる“育成プロジェクト”もスタート。

 その第1試合では、澤田龍人が宍野ジョーに腕ひしぎ十字固めを極めてプロデビュー戦を飾った。アグレッシブに関節技を狙う姿勢で会場を沸かせた澤田は17歳。4歳の時に桜庭和志vs.ホイス・グレイシー戦を見てレスリングを始めたのだという。17歳のケージファイター出現は、日本格闘技界の未来にとって大きな意味を持つことになるだろう。

【次ページ】 ベテランファイターたちも新たなる挑戦に身を投じた。

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