スポーツで学ぶMBA講座BACK NUMBER
<公開セミナー特別レポート1>
プロ野球を取り巻く厳しい経営環境。
現実を直視した千葉ロッテの改革。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAsami Enomoto
posted2013/06/17 10:30
野球界を揺るがせた「1リーグ構想」直後に千葉ロッテの事業部に加わった原田卓也氏。前職のIT業界で培った論理的思考で球団の経営改革に邁進した。
パ・リーグのファンは55%増。
一方で、ロッテなどが所属するパ・リーグの現状はどうなのか?
「もちろん、プロ野球自体の露出が減ったことによる影響があるのは否めません。ただ、もともとパ・リーグ各球団は巨人の恩恵に与れていなかったので、セの球団に比べるとあまり影響を受けていない。むしろ数字で見ると、パ・リーグのファンはこの10年間で増加傾向にあるのです。この増加に関して言うと、'05年に創設された楽天、そしてソフトバンクや日本ハムなどといった地方球団が現地で盛り上がっているというのは重要なファクターです」
パ・リーグのファン人口はセ・リーグの傾向とは関係なく、2002年の1,047万人から2012年には1,619万人へと、10年間で572万人(55%)も増加しているのだ。
子どもの憧れから、野球選手が消えた。
プロ野球に吹く逆風は、テレビの視聴率だけではない。将来のプロ野球人気をになう若年層の“野球離れ”も顕著になっている。
「現在の子どもたちはサッカーなどの競技に比べて野球に触れる機会が少なくなっているんです。4歳から9歳までの年齢層で見ると、非常に低いのです。10代の男子が実際にプレーしたスポーツという観点で見ても、'09年から'11年の2年間でも経年劣化があり、上がる要素はあまりないと見ています」
笹川スポーツ財団の「スポーツライフに関する調査」によれば4歳~9歳男子が行うスポーツの実施頻度で、サッカーが42.7%と高い割合を示しているのに対して、野球は13.8%しかない。10代になると野球は27.6%まで上昇するが、それでもサッカーより13.3%も低い数字にとどまっている。
今や、子どもたちが好きなスポーツ選手に、野球選手がほとんど入らないというのが現実なのである。
プロスポーツビジネスは、多様な事業の集合体。
こうした厳しい経営環境の中で、原田氏は自らが取り組むビジネスをどのように考えているのだろうか。
「プロスポーツビジネスは、チケット販売はエンターテイメントビジネス、放映権については権利ビジネス、スタジアム内の飲食なら外食ビジネスなど、様々な事業をこなさなければならず、難しいビジネスと言われる所以なのです。ロッテで言えば親会社はお菓子会社ですが、(飲食以外の)すべての部門でスムーズにマネジメントしていかなければならないのです」
プロスポーツビジネスには重視するべき3要素があるという。
「まずは“マーケット”です。これは顧客、すなわちプロスポーツではファンの数、規模という捉え方になります。もう一つは“メディア”。プロ野球はメディアの注目度が高いビジネスです。ゆえに球団側がメディアをどう使うかというのは大事なポイントなのです。五輪やW杯といったビッグイベントでは顕著なのですが、メディアとタイアップしながら、どうやって先ほどの“マーケット”にリーチしていくのかが大事になります。最後は、商売をやる場所としての“スタジアム”があります。この3つをうまく組み合わせることによって、ビジネスとして成り立たせていくのです」