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カルチョの名将は日本をこう変える!
“ザック・ジャパン”の方向性を探る。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2010/08/31 12:00
3-4-3システムで、サイド攻撃に重点を置く。
システムは、基本的に3-4-3(オプションで3-4-1-2)で、ウィングバックが高い位置をキープし、積極的に攻撃に関わる。そこに攻撃的MF、ボランチが加わり、厚みのある攻撃を演出する。ACミランでは、ベルルスコーニ会長がミラン伝統の4バックを主張したが、頑なに3-4-1-2のシステムを貫いた。
ザックは、そのシステムをミラン監督就任1年目の1998-1999シーズンに完璧に機能させた。ビアホフとジョージ・ウエアの2トップ、トップ下のズボニミール・ボバンを中心にサイドバックのトーマス・ヘルヴェグ、ボランチのデメトリオ・アルベルティーニ、さらにブラジル代表のレオナルドらが加わって攻撃的なサッカーを展開。シーズン終盤に追いすがってきたラツィオをうっちゃって、見事スクデットを獲得したのである(リーグ最優秀監督賞も受賞している)。自分の哲学を貫き、ACミランの超個性派集団をまとめ、チームとして機能させ、結果を出した手腕は高く評価されるものだ。日本代表でも実績に関係なく自らの眼力で選手を選び、攻撃的で質の高いチーム作りをしてくれるだろう。
南アW杯で得た「堅守」を疎かにせず攻撃的になれるのか?
ただ、不安もなくはない。
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攻撃的サッカーを貫くがゆえ、南アフリカW杯で日本が残した財産である「堅守」を疎かにするのではないかという声もある。だが、ウディネーゼのような中堅クラブでリーグ戦3位という結果を出したり、ACミランで優勝するには、守備が機能していなくては困難だ。実際、ミランの監督に就任した時、真っ先に指示したのは「中盤の底で守備を支えるフィジカルの強い選手が欲しい」ということだった。デサイーを放出したために、自分のシステムを機能させ、守備を安定させる選手を必要としたのだ。ザックがセリエAで残した結果は、彼が決して守備を疎かにせず、それでいて攻撃意識も高いことを証明している。
また、トリノ時代に大黒将志を指導したとはいえ、日本のサッカーのことや日本人のメンタリティ、特性について、あまり見識がないことも不安要素として挙げられる。実際、これから選手を発掘、選考するのに相当の時間と労力を消費することになるだろうし、自分のやりたいスタイルを構築するには、ジーコやオシムの時以上の時間が必要になるだろう。だが、2011年1月には結果を求められるアジアカップ(カタール)がある。シーズン真っ盛りの中東勢に対して、オフ明けの日本人選手で対峙するわけだが、その状況下でどのくらいチーム力を高め、結果を出すことができるか。モラトリアムがほとんどないザックに課せられるハードルは、非常に高い。