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なぜグアルディオラを選んだのか?
バイエルンが求める“革新”と“安定”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/04/20 08:01
今年1月、FIFAバロンドールの表彰式でのグアルディオラ。運命のいたずらか、今年のCL準決勝では古巣バルセロナと来季から率いるバイエルンが激突することとなった。
ラームの右SBコンバートの恩恵を受けたロッベン。
現在の主力に目を向けると、オランダ人指揮官の功績の大きさを改めて思い知らされる。ファン・ハールには、コンバートや大胆な選手起用によって、100あるチームの力を120や150にする手腕があった。
まずは、ポジションの変更による“改革”だ。
ファン・ハール就任以前は2列目の攻撃的なポジションのMFだったシュバインシュタイガーを守備的MFとして起用。現在のバイエルンの心臓を作ったという意味で最高のコンバートだろう。オランダ人指揮官とは馬のあわなかった彼も、ポジション変更についての話をするときだけは饒舌になる。
「以前よりもいろんな部分で責任を負うことになったのは確かだけど、それこそ、僕が望んでいたことだからね。守備的なMFとしてプレーすることが、本当に楽しいんだ」
そして、キャプテンであるラームのポジション変更。右利きの彼はファン・ハール就任以前は左サイドバックとしてプレーしていたが、ファン・ハールが右サイドへ転向させた。後にこれが大成功だとわかる。彼の献身的なオーバーラップの恩恵を受けたのが右MFのロッベンだった。バイエルンの右サイドは大きな武器となった。
中盤の選手だったアラバの左SBへのコンバートも見事的中。
ところが昨シーズン、監督に就任したハインケスはラームを再び左サイドバックに戻す。割を食ったのがロッベンだった。昨年2月にはバイエルン不調のやり玉にあげられるなど、評価を落としていた。
そこで、ハインケス監督はファン・ハール時代と同じようにラームを右サイドバックで起用することを決断。3月10日のホッフェンハイム戦でラームが再び右サイドで先発すると、ロッベンは一気に調子をあげた。この試合で2ゴール、2アシストの大活躍を見せたのを皮切りに、ホッフェンハイム戦より前の15試合は5ゴール、2アシストだったロッベンが、以後の9試合で7ゴール、4アシストを記録した。
あるいは、左サイドバックを務めるアラバ。彼はもともと中盤の選手だったが、その高い技術と視野の広さにファン・ハールは注目した。
'09-'10シーズン3月のリーグ戦で17分間だけ左サイドバックとして起用し手ごたえを得ると、CL決勝トーナメント1回戦のセカンドレグ、フィオレンティーナとの試合でいきなり左サイドバックとして先発起用。相手の猛烈なプレスをうけるなかでも落ち着いたプレーを見せて、チームメイトたちを驚かせた。今季スペインからやってきたマルティネスも、その能力にもっとも驚かされた選手として、バイエルンで最年少出場記録を持つアラバの名を挙げている。