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<舞姫が復活する日> 安藤美姫 「失われた“ミキ”を求めて」 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

PROFILE

photograph byAtsushi Hashimoto

posted2013/02/18 06:01

<舞姫が復活する日> 安藤美姫 「失われた“ミキ”を求めて」<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto
わずか14歳で4回転を跳び、18歳で初の五輪を経験。
失意の時期も乗り越え、'11年に2度目の世界女王に輝くも、
選手人生の絶頂期に休養を宣言。約2年の月日が流れたが、
人々は何故、美姫がいればと想像し、復帰を待ち望むのか。
公私に渡って支え続けてきた関係者たちの証言から、
見る者すべてを惹き付ける、彼女の魅力の秘密を探った。

 両手を開き、指先を嬉しそうに眺める。

「この爪、安藤がきっかけなの」

 城田憲子の10本の爪には「銀ラメ」のマニキュアが施されていた。

 城田は、日本スケート連盟の元強化部長だ。そのときの縁で、女子フィギュアスケーターの安藤美姫とは、今も親交が続いている。

 安藤にお小言を言うのも「お目付役」の仕事だ。数年前のオフ、お洒落好きな安藤が爪を派手に装飾していたことがあった。

「その爪なんとかならないの? って怒ったんです。そうしたら『やってみてから言ってください』って返されて。それで塗ってみたら、物を持ったり、何かを開けるとき、便利なのよ。本当に丈夫で、爪が割れなくなった。それではまっちゃった。ははははは」

 城田が見せた無邪気な笑顔は、はまった理由が「割れなくなった」からだけではないことを物語っていた。

 我々が安藤に惹かれる理由――。その一端は、こんなところにもあるように思えた。

安藤の復帰が予定より遅れている理由はただひとつ、コーチの不在。

 安藤は今シーズンもまた、リンクに戻ってこなかった。

 2011年、モスクワで開催された世界選手権で二度目の世界女王になった安藤は、そのまま休養期間に入った。城田がこう慮る。

「世界選手権のあとは、虚脱感に襲われやすい。だから、それはしょうがないと思った」

 当初は、ソチ五輪のプレシーズンにあたる今季から復帰する予定だった。ところが昨年10月、2季連続となるGPシリーズ欠場を発表した。

 理由はひとつ、コーチの不在だ。昨年3月に、休養に入る直前まで約5年間コンビを組んだニコライ・モロゾフにコーチを依頼したのだが断られ、そのモロゾフに代わる新コーチも見つけることができなかったのだ。

 最長で4分10秒間、約60m×約30mの広い氷上で、自分ひとりに視線が注がれる世界。それがフィギュアスケートだ。重圧の中で唯一、自分の味方になってくれるのがリンクサイドに立つコーチである。その存在なくしてスケーターは戦えない。

【次ページ】 出来不出来の波も減り、これからというときに……。

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