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<メッシとロナウドの原点をたどる> まだ彼らが何者でもなかった頃。~リスボン、バルセロナ探訪記~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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photograph byAFLO

posted2013/01/31 06:00

<メッシとロナウドの原点をたどる> まだ彼らが何者でもなかった頃。~リスボン、バルセロナ探訪記~<Number Web> photograph by AFLO
眩い光が当たる場所で、世界の頂点を賭けて2人が争う様は
もはや見慣れた光景となった。しかし今世紀が始まった頃、
彼らはまだ夢と可能性を秘めた若者でしかなかった。
2つの大きな才能が歩んだシンデレラストーリーは、いかにして
幕を開けたのか――。

 その日の夕方、アウレリオ・ペレイラはリスボンにある自宅で、テレビの実況中継を眺めていた。

 映っているのは、チューリッヒのFIFAバロンドール授賞式の会場だ。舞踏会のような華やかさは、のどかな空気のながれるリスボンとはまったく違う。

 画面の中には、少し緊張した表情のクリスティアーノ・ロナウドとリオネル・メッシがいる。ふたりの間には、緊迫したどこかの国境線を分断するかのように、温和な顔をしたアンドレス・イニエスタが座っている。

 もう何度目にしたことだろう、とアウレリオは思った。

「クリスティアーノにメッシ。メッシにクリスティアーノ。もう何年もそうだ。このふたりが世界の頂点にいることは明らかじゃよ」

 アウレリオはスポルティング・リスボンの下部組織を統括する立場にいる。クラブに入ってから、もうすぐ半世紀が経つ。若きタレントを発掘するのが仕事だ。今から16年前、マデイラ島からやってきた痩せた少年に、とてつもなく大きな才能を見いだしたように。

「わしはクリスティアーノを息子のように思っておるから……」

 画面の中のファビオ・カンナバーロが、バロンドール受賞者の名を告げる。会場に歓声があがり、やがて小さなアルゼンチン人は黄金のボールを手にするために、ゆっくりと壇上へと上がっていった。

 小さなバルの席に腰掛けたアウレリオは、ロナウドが4年連続でバロンドールを取れなかったという事実を、どちらかというとあっさりと受けとめているようだった。

「別に悔しくはない。もちろん、わしはクリスティアーノを息子のように思っておるから、できるなら彼にとってほしい。ただ、メッシも同じように素晴らしい選手だ。それに彼にはバルサにいるというアドバンテージがある。シャビにイニエスタ、誰もがメッシのためにプレーする。ロナウドはどうだ? マドリーは彼がひとりでチャンスを作って、ひとりで得点を決めとる。負担がまったく違うんだ」

【次ページ】 「体を大きくしたい」と、人の倍近くは食べたロナウド。

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