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<フリーキックの極意を語る> 中村俊輔 「心で上回れば、迷いは消える」 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2013/01/18 06:01

<フリーキックの極意を語る> 中村俊輔 「心で上回れば、迷いは消える」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama
アスリートは素晴らしいパフォーマンスを見せるために、
フィールドでどのような選択を繰り返しているのか。
Number820号では、中村俊輔の魔法のFKが生まれるまでの秘密に迫った。

 セルティック・パークの実況席では男がマイクを手繰り寄せてがなり立てていた。

「NAKAが決めた! 魔法の瞬間だ!」

 中村俊輔のフリーキックは、ロベカルの“悪魔”よりもジュニーニョ・ペルナンブカーノの“魔法”という言葉のほうがしっくり来る。

 だが、ピンポイントに放り込む正確な技術やキック力ばかりが「魔法の左足」のすべてではない。ゴールキーパーとの駆け引きにおいても、そのマジックは繊細極まりない。確率を積み上げながら、ときには相手の裏をかき、欺き、ときには相手の虚を突く。その妙こそが彼のフリーキックの醍醐味と言える。

 ニア、ファー、上、下……どこに、どのように打つか。瞬時に判断する選択の連続によって弧を描くキックは放たれる。中村流「魔法の極意」とは――。

ゴールキーパーのタイプによって、どう打つかを考える。

「(フリーキックを)打つ判断の順番は、まずゴールキーパーのタイプを考える。読んで先に動いてくるタイプか、そうでないタイプか。前者ならどう読んできそうか。また高めのボールに弱そうか、それとも低いボールに弱そうか。そういった幾つかの情報を自分なりに把握したうえで、どのコースにどう打つか決める感じだと思う」

 選択の初手のポイントは、相手にあった。

 キーパーの情報がないと始まらないが、事前に詳しく調べ上げる必要はない。対戦経験があれば頭のデータベースにある分だけで十分だ。「ちょっとは新しい情報が欲しいから」と、むしろ試合前のアップ中にチラ見して生の情報を大事にしようとする。後は試合のなかで探っていけばいい。

 キーパーの情報を活かしてフリーキックを決めた象徴的なゲームが昨季Jリーグ最終節(12月1日)、ホームのサガン鳥栖戦だった。

 後半8分、ペナルティエリア手前右。中村はニアに動いたキーパーの逆を取り、低い弾道の速いボールを蹴ってワンバウンドでファーに流し込んでいる。これには伏線があった。

【次ページ】 最初のセットプレーで多くの情報を得ることの大切さ。

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