スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
メジャーに現れたケタ外れの才能!!
“超”投手ストラスバーグの悩みとは?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2010/06/27 08:00
個人的な記憶をたどると、新人がこれほどのブームを巻き起こしているのは、1981年にドジャースで活躍したフェルナンド・バレンズエラ以来ではないか。
1995年の野茂英雄も、2003年のマーク・プライアーもこれほど話題をさらったという感じはしなかった。
話題の中心になっているのは、ナショナルズの新人、スティーブン・ストラスバーグである。
ストラスバーグの凄さは、「分かりやすさ」にある。
とにかく、速い。
ストレートの平均スピードは97マイル、時として101マイルも計測される。
チェンジアップの平均も、驚くなかれ90マイルを超えている。時速145キロのチェンジアップを投げられては、打者としては後手後手に回らざるを得ない。
勢いに乗った時など、ツーナッシングと追い込んでから遊び球を投げることもない。3球勝負で3球三振。「大器」とはこういう選手のことを指すのだと、実感する。
そのストラスバーグが、いま議論の対象になっているのをご存じだろうか?
ストラスバーグが沈滞するオールスターを変える!?
今年のメジャーリーグのオールスターは7月13日(現地時間)に行われるが、ストラスバーグがナショナル・リーグのメンバーに選出されるかどうかが話題になっている。
正直、ここ数年のオールスターは沈滞ムード。勝ったリーグ側にワールドシリーズのホーム・アドバンテージが与えられるとは言っても、インターリーグが定着し、リーグ間の戦いが珍しくなくなっているいま、商品価値は低くなってしまった。
しかしストラスバーグがマウンドに上がるとあれば、注目度、視聴率が上がるのは間違いなし。
ところが、驚異の新人のオールスター出場に、思わぬ「足かせ」がはめられるかもしれないのだ。
若手投手の投球回数制限はどれくらい有意義なのか?
アメリカでは、若手が登板過多で選手寿命が短くならないように、ここ数年でイニング制限を設けるのが常識になっている。前述のマーク・プライアーは2002年に116.2イニングを投げた後、2003年に211.1を投げ、これが命取りになってしまった。プライアーは2006年を最後にメジャーのマウンドに上がることはなかった(実は私の大好きな投手だった)。
ちなみに1999年に西武に入団した松坂大輔は、1年目180回、2年目167.2回、3年目240.1回と大幅に投球回数を増やした翌年、4年目には故障のために73.1回しか投げられなかった。
はたして日本の球団は、いま現在、投球回数とケガの因果関係について統計を取っているだろうか? ちょっと心配になる。
現在、アメリカでの常識的なラインは、前年の登板イニング数の1.2倍。ストラスバーグを大事に、大事に育てたいナショナルズは今年の投球回数を「160」と決めている。
メジャーで160イニング投げられると思うとさにあらず。マイナーで55イニングを投げているので、ナショナルズのユニフォームを着ての登板は105イニングに限られているのである。