Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER

<異国での1年を振り返る> 岡田武史 「いま中国を離れる事は私にはできない」 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byMasahiro Fukuoka

posted2012/12/14 06:01

<異国での1年を振り返る> 岡田武史 「いま中国を離れる事は私にはできない」<Number Web> photograph by Masahiro Fukuoka
苦闘の連続だった中国での1年目のシーズンが終わった。
指揮官の地道な指導により、変化の兆しを見せる選手たち。
その手腕に周囲の信頼も厚い。かつて日本を率いた男は、
来季もこの国のサッカーの未来のために心血を注ぐ。

 改革の過程に、オフなどない。

 11月下旬、岡田武史は日本にいた。

 中国スーパーリーグ、杭州緑城のU-19、U-17ユースチームを引き連れ、静岡県・御殿場で強化キャンプを張っていた。

 夕方、寒風吹くグラウンドではU-17の紅白戦が行なわれていた。響き渡る指揮官の喚声。いいプレーをすれば「グッド!」、悪ければ嘆息とともに表情をひん曲げる。感情豊かな大きなリアクションに反応するように、段々と若芽たちのボルテージも上がって声を出していく。冷気を熱気が追いやっていた。

「みんないい声が出てたかな」

 ユースも統括する“全権監督”はグラウンドを出ると、そう言って白い歯をこぼす。だが時計に目をやると、別のグラウンドで練習していたU-19の報告を聞くためか、足早に消えていった。その足取りは軽やかだった。

 中国1年目のシーズンは終わった。

 岡田率いる杭州緑城は、結局16チーム中12位にとどまった。序盤には最下位まで沈みながらも一時5位まで浮上。そこから再び下降線を辿って残留争いに巻き込まれたものの、終盤戦の奮闘で何とか持ちこたえた。下がって上がってまた落ちる。そして最後にちょこっと上がる。その成績の波形を眺めるだけで岡田の苦闘ぶりが伝わってくる。

こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
NumberWeb有料会員になると続きをお読みいただけます。

残り: 4289文字

NumberWeb有料会員(月額330円[税込])は、この記事だけでなく
NumberWeb内のすべての有料記事をお読みいただけます。

海外サッカーの前後の記事

ページトップ