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大谷獲得は糸井の流出に備えて?
日本ハム打線の“近未来予想図”。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2012/12/12 10:30

大谷獲得は糸井の流出に備えて?日本ハム打線の“近未来予想図”。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

12月9日、日本ハム入りを正式表明した大谷翔平(右)は栗山英樹監督と笑顔で握手。

 12月9日、かねてからメジャーリーグ挑戦か日本球界入りか注目されていた大谷翔平(花巻東)が、日本ハムへの入団を表明した。昨年の菅野智之(東海大)に続いて2年連続して1位指名選手を獲り逃がせば、将来的な戦力低下と士気の低下を招きかねないところだった日本ハムはひと息ついただろう。

 今回の大谷の表明を受けて、「今後、メジャー挑戦を隠れ蓑にして意中の球団に入ろうとする選手が出る」と確信的に言ったプロ野球OBがいた。日本ハム入り表明前、「メジャー挑戦をドラフト前に宣言しながら日本ハム入りすれば学校や家族も批判されるかもしれない、だから日本ハム入りに踏み切れなかった」と大谷は言ったが、「隠れ蓑云々」と言われることが大谷は嫌だったんだなと思った。同時に、こんなナイーブな少年が勇気を出して「高校を出てすぐメジャーに挑戦する」と言えたことを改めて不思議に思った。

 プロ野球選手は権力者である。高校を出たばかりの18歳でありながら契約金1億円(プラス出来高5000万円)と年俸1500万円を手にし、日本ハム入団を表明しただけでテレビカメラが並び、カメラのストロボが焚かれるのである。そういう存在であるならば、もっとふてぶてしくなっていい。

小笠原やSHINJO、ダルビッシュらの穴を埋めてきた日本ハム。

 日本ハムの側から見ると、大谷獲得の裏には近い将来に備えるという意味合いがあった。その話に行く前に有力選手の流出とチーム成績という視点で日本ハムを見てみよう。日本一になった'06年以降、有力選手の流出は次の通りである。

'06年/1位 なし
'07年/1位 岡島秀樹→レッドソックス、小笠原道大→巨人
'08年/3位 金村曉→阪神
'09年/1位 なし
'10年/4位 藤井秀悟→巨人、スレッジ→横浜
'11年/2位 森本稀哲→横浜
'12年/1位 ダルビッシュ有→レンジャーズ

 '06、'09年を見ればわかるように主力が残った年は強い。しかし、最も痛手が大きかった'07、'12年にもリーグ優勝しているところに日本ハムの強さの秘密がある。

 '07年に抜けた小笠原、SHINJO(引退)の穴は打率.334で初の首位打者を獲得した稲葉篤紀と初の打率3割に到達した森本稀哲が埋め、'12年に抜けたダルビッシュの大穴は、防御率1位、ベストナイン、MVPを獲得したプロ6年目の吉川光夫が埋めた。1回なら偶然と言われても仕方ないが、6年間で2回あれば偶然とは言えない。こういう備えをきちんとしているのが日本ハムの大きな特徴である。

【次ページ】 チームの命運を左右しかねない田中賢介のメジャー挑戦。

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