SCORE CARDBACK NUMBER

鬼門のヨーロッパで
ジャパンが歴史的勝利。
~ラグビー、40年目の敵地初白星~ 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

PROFILE

photograph byNobuhiko Otomo

posted2012/11/25 08:00

鬼門のヨーロッパでジャパンが歴史的勝利。~ラグビー、40年目の敵地初白星~<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

 スタンドを埋めた観衆は、自軍のFWがジャパンをめくり上げると、口笛を吹き鳴らして熱狂した。ラインアウトの相手ボールをジャパンが奪うと悲鳴がこだました。ボールを動かし続けたジャパンがトライラインに走り込むと、スタジアムを沈黙が覆い尽くした。喜んでいるのは日本のベンチと、約100人いる在留日本人会の応援団のみ。

 11月10日。東欧ルーマニアの首都ブカレストで行なわれたテストマッチで、日本代表は34対23のスコアで勝利を飾った。1973年に初めて英仏遠征を敢行して以来40年目にして初となる、欧州勢とのアウェー戦勝利だった。

「歴史を作れた気がします。ルーマニアのデカいFWを相手に耐え切れた。8年前を知っている身としては感慨深いです」

 この試合で日本代表FW歴代最多タイの62キャップを達成したジャパンFWの柱、大野均は言った。「8年前」とは、2004年11月の欧州遠征。大野は当時、代表入り1年目。同じブカレストで行なわれたルーマニア戦はベンチから苦しい戦いを見つめていた。

スクラムでは劣勢も、自分たちの長所を出し切ってルーマニア撃破。

「練習グラウンドは毎日ドロドロ。試合会場も、前日練習のときに選手みんなで犬の糞を拾ったくらいでした(笑)」

 普段は練習も試合も、恵まれた中で行なっている日本の選手にとって、慣れない食事や練習環境、時差、さらに気候の不安定な秋の欧州は、長い間鬼門だった。

 しかし、ジャパンは逞しくなった。

「PNC(パシフィックネーションズ杯)のアウェー戦や、トップリーグで世界のトップ選手との戦いを経験してきたことで、どんな相手とどんな条件で戦っても動じなくなった」と大野。ルーマニア戦はスクラムが壊滅的にやられたが、ジャパンFWはラインアウトに完勝し、ディフェンスでルーマニアを封じ込めた。うまくいかないときも焦らずに自軍の長所を出せるメンタルの強さが、歴史的勝利の秘訣だった。

「敵地で勝つのは本当に大変だけど、そこから這い上がって下さい。僕も、初めてアメリカへ行ったとき、与えられた控室はトイレでした」。遠征前の合宿でスポットコーチを務めた格闘家の高阪剛さんは、そんな言葉をジャパン戦士に贈った。2015年W杯の世界トップ10入りへ。這い上がる旅は始まったばかりだ。

関連コラム

関連キーワード
大野均

ページトップ