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チーム内の不協和音をついに一掃!!
スペインは「進むべき道」を邁進中。 

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中嶋亨

中嶋亨Toru Nakajima

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photograph byGetty Images

posted2010/06/10 10:30

チーム内の不協和音をついに一掃!!スペインは「進むべき道」を邁進中。<Number Web> photograph by Getty Images

前回のドイツW杯ではベスト16止まりだったスペイン代表。過去のW杯での戦績は1950年の4位が最高である

“試運転中”のサウジ戦で見えた高精度の連係プレー。

 負傷者、チーム内の不仲説というネガティブな問題は解決の方向に向かっているスペイン。しかし、オーストリア合宿中のプレー面ではまだまだ“試運転中”だった。

 5月29日のサウジアラビア戦では、この時点でのレギュラー候補、FWビジャ、左SHイニエスタ、右SHシルバ、MFシャビ、MFシャビ・アロンソ、守備的MFブスケツ、右SBセルヒオ・ラモス、左SBアルベロア、CBプジョル、ピケ、GKカシージャスを先発させたものの、コーナーキックから先制点を与える不覚を取った。「連係面でも自分自身の判断力でも準備が出来ていなかった。2週間、実戦から離れて感覚が鈍っていた」(カシージャス)、「本番でのああいうミスは我々をワールドカップから追い出すことになる(デルボスケ)」と主将と監督が語ったように、この日のスペインは明らかに鈍い動きを続けていた。それでも、生命線であるボールを動かす連係プレーは時間を経るうちに徐々に精度を増していき、前半途中から試合終了までの間に幾度もゴールチャンスを作り出して結果的には3対2と勝利した。

全力で向かってきた韓国をナバスの弾丸シュートで撃破。

 6月3日に行われた韓国戦では、サウジアラビア戦からの約1週間でチームが内容の濃い練習を行ったことをうかがわせた。

 韓国は立ち上がりから守備を固め、ペナルティエリア手前に強固な守備網を築いた。さらに韓国守備陣は本番さながらの深いタックル、激しいプレッシャーでスペインの攻撃に立ち向かった。

 この日のスペインの先発は、FWジョレンテ、左SHマタ、右SHナバス、MFセスク、イニエスタ、守備的MFハビ・マルティネス、左SBカプデビラ、右SBセルヒオ・ラモス、CBアルビオル、マルチェナ、GKレイナとサウジアラビア戦から大幅にメンバーを入れ替えている。それでも、イニエスタ、セスクを中心に立ち上がりからボールを支配。セスクは「まだまだ本調子からは程遠い。もっとリズムを取り戻さなければ」と自らのプレーを評したものの、初先発となったナバスに1対1を仕掛ける場面を提供するパス回しを演出した。

 身体能力、技術、戦術で韓国を上回るスペインは、運動量でも負けず。こぼれ球を拾い続けて敵陣内での波状攻撃を生みだした。そして、この日の殊勲選手となるナバスは、前半だけで右サイドを突破してのクロスを5本放ち、長身FWジョレンテがあと少しで得点するという場面を提供し続けた。しかし韓国守備網も素早いカバーリングで致命的なピンチを幾度もしのぎ、スペインの猛攻に耐えていた。

 しかし後半41分にナバスがそれを打ち破る。

 右サイドからインサイドに入ったところでボールを受けたナバスは、右足を一閃。浮き上がる弾道のシュートが、ゴールネットに深々と突き刺さった。

【次ページ】 スペインの生命線であるパスワークは確実に向上中。

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