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チーム内の不協和音をついに一掃!!
スペインは「進むべき道」を邁進中。 

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中嶋亨

中嶋亨Toru Nakajima

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posted2010/06/10 10:30

チーム内の不協和音をついに一掃!!スペインは「進むべき道」を邁進中。<Number Web> photograph by Getty Images

前回のドイツW杯ではベスト16止まりだったスペイン代表。過去のW杯での戦績は1950年の4位が最高である

 5月24日からマドリーの連盟トレーニングセンターで合宿を開始したスペインは、5月28日にオーストリアのインスブルックへと移動。ユーロ2008の拠点となった土地で南アフリカの寒さと高地対策のための合宿を行った。

 リーガが終わってから1週間の休みを済ませて集まった選手たちはフィジカル中心のメニューで体を再び作り直した。午前と午後の二部練習では午前中にボールを使ったメニューを多く行い、午後にはフィジカル系のメニューが多く行われた。

 5月28日にオーストリアへと出発するまでの5日間の練習ではシーズン終盤を負傷離脱したセスク、フェルナンド・トーレス、イニエスタや負傷を抱えて過ごしたシャビ、ビジャの回復具合に注目が集まった。その中でセスク、イニエスタ、シャビ、ビジャは初日からチームメイトと共に大半のメニューをこなし、周囲を安心させた。

 右膝の手術を行ったフェルナンド・トーレスはジムでのリハビリを続け、全体練習に合流できたのは3日目の午前練習からだった。4月の手術以来初のボールを使った練習に参加したトーレスは「痛みも違和感も無いし、リハビリが成功した。焦らずに回復していけばワールドカップに参加できる」と語っている。

冷静な対応でレイナとの不仲説を一蹴した第三GKバルデス。

 負傷者が順調に回復していく一方で合宿2日目からはある噂が浮上した。それは第二GKレイナと第三GKバルデスとの不仲説である。

 同じバルセロナの下部組織で育ちながら、不仲であったために前代表監督アラゴネスがバルデスを招集しなかったと噂されるほど、二人は曰くつきの仲だった。確かにバルセロナの主将でもあり、二人を良く知るプジョルが「そんな噂には何の根拠も無い」と語ったものの、練習中に二人が会話を交わすことは一切無く、両者がカシージャスとだけ話す姿は少し不穏な雰囲気を生み出していた。ユーロ2008ではセビージャのベテランGKパロップが第三GKの立場ながらチームを盛り上げただけに、チーム内に不協和音を生み出しかねない選択ミスをデルボスケ監督が犯したかと懸念された。

 しかし、この問題はオーストリアへと移動してから好転することとなった。6月1日の練習後、バルデスは会見の席上で「自分は第三GKであることを受け入れているし、カシージャス、レイナと共に世界一を目指すことを光栄に思っている」と発言。するとその翌日から、練習中のレイナとバルデスの間には打って変わって会話が増えるようになったのだった。3日の韓国戦を前にデルボスケ監督は「バルデスは発言によってチームの一員になろうとしていること、強いグループを作ろうとしていることを示してくれた」とバルセロナのレギュラーGKを賞賛。韓国戦では前半をレイナ、後半をバルデスにプレーさせることを選択した。

【次ページ】 “試運転中”のサウジ戦で見えた高精度の連係プレー。

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