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新大関・把瑠都と山本山。
同門人気力士の厳しい夏。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

photograph byKYODO

posted2010/06/10 06:00

勝った把瑠都が、負けた魁皇と一緒に首を傾げる。勝ち越しを決めたが、取り組みの内容にはまだまだ不満が残るよう

勝った把瑠都が、負けた魁皇と一緒に首を傾げる。勝ち越しを決めたが、取り組みの内容にはまだまだ不満が残るよう

 新大関把瑠都の人気が凄い。朝青龍に代わる相撲界の救世主となっている。大関昇進にあたり、暴言や乱暴な態度が目立った朝青龍を反面教師に、強さと共に「誰からも愛される力士」となることを誓い、春巡業では有言実行。人懐っこい笑顔や表情を存分に振りまいた。

 しかし把瑠都はその分、土俵外での大関としての責務に忙殺されてしまう。場所前の関係者への挨拶回りに加え、大相撲のイメージアップのため政府や官公庁のイベントにも出席するなど、稽古不足で大関初陣の夏場所を迎えた。それを補う開き直りが期待されたが、勝ちを意識し慎重になり小手先の相撲に走った。腰高で踏み込みが甘く、先場所猛威を振るった必殺のもろ手突きの威力も半減した。

 苦しみながら初日から7連勝と白鵬に食らいついたが、今場所の相撲内容ではこれが精一杯だった。疲れがピークに達した中日からは、古傷の左膝の痛みも加わって失速し、10勝5敗。大関という地位の重みと難しさを痛感したに違いない。

大関の厳しさを知った把瑠都と開き直った山本山。

 ほろ苦大関デビューの把瑠都に対し、厳しい番付で踏みとどまったのが、同じ尾上部屋の西十両11枚目の山本山である。

 2年前の秋場所で国内出身関取最重量記録を更新(252kg)。筋骨隆々でもただの肥満でもない、ふんわり柔らかい肉に覆われた巨漢である。圧倒的な大きさで一躍人気者になったが、昨年から体調不良や怪我が重なり、番付が急降下。迫力ある豪快な相撲が影を潜めた。

 相撲と同様に、ウィット溢れる軽妙なトークも最近は不発だ。新入幕会見で自らの大食をもじって「どんぶり王子」と宣言し、身体検査の体重計を取り囲む記者団へは「プライバシーの侵害ですよ」とチクリ。まわしの後ろをつかまれお尻が露出した時に「完全18禁でしょ」と切り返すなど、数々の名言が今では懐かしい。

 今場所、山本山は体重265kgと記録を更新した。巻き返しが期待されたが、その巨体を持て余し、相手の動きに翻弄される相撲を連発し、3勝6敗と幕下陥落の瀬戸際まで追い込まれた。しかしここから自称「なにかをしでかす男」が本領を発揮。弱気の虫を振り払い自分を信じて攻撃相撲に方向転換し、その圧力と気迫が土壇場で白星を呼び込み8勝7敗。

 相撲界では数少ない貴重なキャラを持つ山本山。危機回避に一安心である。

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