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大怪我をバネに大関昇進。
“救世主”把瑠都の魅力。
~ようやく白鵬のライバル出現!~ 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

photograph byKYODO

posted2010/04/26 06:00

「明るい大関になりたい」と宣言した把瑠都。出羽海理事からは、私生活についての注文も

「明るい大関になりたい」と宣言した把瑠都。出羽海理事からは、私生活についての注文も

 言動はともかく、興行面での看板力士だった朝青龍を失い、大阪春場所はその影響が心配されていた。初めて一人横綱となった白鵬は、その重責を楽しむかのような段違いの相撲内容で全勝優勝を果たす。もはやその強さは異次元の世界だった。しかしその白鵬の優勝決定を千秋楽結びの取組まで延ばしたのは、関脇把瑠都の驚異的な頑張りだった。

 把瑠都の直近2場所の成績は9勝と12勝だったが、場所前、友綱審判部長は大関昇進の条件に「優勝争いに絡んでの13勝以上」という厳しいノルマを課した。

 だが把瑠都は初日の6日前の稽古中に左手親指の付け根部分を負傷してしまう。検査の結果、靭帯損傷が判明し、「指4本じゃまわしを切られるから、四つは難しい」と険しい表情を浮かべた。満足な最終調整が出来ず、初日を前に正直不安で一杯だったに違いない。しかし把瑠都は本場所中、怪我の影響を微塵も感じさせない取組を披露した。

白鵬・把瑠都時代の到来を予感させたスケールの大きさ。

 初日の阿覧の変化には難なく対応し、2日目の豪栄道からは、立合いに強烈なもろ手突きを披露した。相手ののど付近を丸太のような両腕で下から上へ突き上げ、主導権を握り、安定した腰の構えで相手を追い詰める。その足の運びには隙が無かった。小兵力士のいなしや変化にも慌てず騒がず素早く対応し、そのまま波に乗った。

 正念場の後半戦。指の傷の癒えた把瑠都は、4大関との取組でその剛力を遺憾なく発揮。魁皇、琴欧洲、日馬富士、琴光喜を一方的な内容で次々に撃破し、勢いとスケールの違いを見せつけた。白鵬には子ども扱いされたものの、朝青龍に代わって最大のライバルとなるだろう。

左ひざの負傷が生み出した必殺のもろ手突きで大関に。

 大相撲界の救世主となった把瑠都は、14勝1敗の文句ない成績で大関に昇進した。3度もの左ひざの大怪我を機に、前に出る相撲を意識的に研究し、下半身をジムで鍛え直し、パワーと敏捷性を強化した。その地道な努力が、今場所新たな武器に加わった、必殺のもろ手突きを生み出した。

 スケールの大きさに加え、本国エストニアでの厳しい生活ぶりを感じさせない陽気で柔和な表情や、ユーモアと茶目っ気たっぷりの受け答えも魅力的。注目の口上は「地位を汚さぬ」というシンプルなものだった。

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