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川崎宗則が叫び続ける「チェスト!」。
ルーツは薩摩の剣術にあり!? 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/06/09 12:35

川崎宗則が叫び続ける「チェスト!」。ルーツは薩摩の剣術にあり!?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

「じゃあ皆さん、行きましょうか例のヤツを。シャキッと立ってください。このヤフードームから桜島まで届くように、腹から声出せよ、行くよ、1,2,3、チェスト―!!!」

 もはや福岡名物ともなった感がある、お立ち台からの絶叫。

 5月30日、ヤフードームの中日戦。この日、サヨナラヒットを放ちお立ち台に上がった川崎宗則が、今季3度目の「チェスト」をかました。

 桜島へ向けた薩摩隼人の咆哮。即ちそれは川崎が好調の証である。

 昨季はレギュラー定着後、最低の打率となる.259に終わるなど、不甲斐ないシーズンとなった川崎だが、今季は開幕から絶好調をキープし、ここまで一番打者ながらリーグトップの得点圏打率.438、21試合連続安打を含む88安打など、主力がケガで離脱するなか、文字通り先頭に立ってチームを引っ張っている。

 走攻守、すべてにおいて全力でぶつかっていくプレーを見ても、気合いが乗りまくっているのがわかる。気合いの見える選手は大好きだ。実に気持ちがいい。

 で、チェストである。

 ……そういえば「チェスト」って、なんだ?

 かつて空手バカ一代で三角飛びを決めるマス大山が叫んでいたような気もする。

 時代劇や小説などで、薩摩藩士が叫んでいたような気もする。

 川崎は以前「チェストの意味は自分で調べてください」とお立ち台で言っていたので、今更ながら調べてみることにした。

「チェストォォ!」と叫ぶ薩摩隼人の真意とは?

「チェスト」とは、川崎の地元・鹿児島の方言であることは間違いないのだが、その意味は諸説ありすぎて、どれが本当だかわからない。そんな折り、鹿児島の地に古くから伝わる剣術「示現流」という文字が浮かび上がった。

 代々の薩摩藩士が学び、幕末には敵対する志士たちを震え上がらせたという示現流。その十二代宗家師範である東郷重徳さん(財団法人 示現流東郷財団 理事長)に、恐れ多くも「チェスト」の意味を聞いてみることにした。

「“チェスト”というのは、猿叫(えんきょう)と呼ばれる気合いの叫び、自分を鼓舞する時に使う叫び声です。戦が始まる前に自陣で『チェストォォ!』(←電話口ですごい迫力)と気合を入れます。『それゆけ』という心の底からの叫び声ですよね。ただ、実際に斬るときは『エィ』が変換した『キェェェ!』(←さらにすごい迫力)という声になります。チェストは示現流発祥の言葉ではなく、薩摩の方言みたいなものですが、川崎選手の場合も、成績をあげて『チェスト』と自らを鼓舞し、『これからもやるぞ!』と気合を入れているのだと思います」

 なるほど、よくわかり申した。さすがは薩摩隼人でごわすな。

 しかし、東郷さんの話を聞き進めるうちに、チェストの意味以上に、川崎のプレースタイルと示現流に相似点があることに気がついた。

【次ページ】 川崎のスタイルに通じる“一の太刀を疑わず”の精神。

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