MLB東奔西走BACK NUMBER
不完全燃焼でシーズン終了の斎藤隆。
満身創痍の42歳、アメリカで何を思う。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/10/08 08:01
16試合に登板し、防御率6.75、失点14、自責点9と厳しいシーズンとなった斎藤隆。ダイヤモンドバックスとは1年契約のため、来シーズン以降のことは現在のところ未定である。
「接合部分周辺を痛めてしまうのは明らかに老化現象」
しかし今シーズンの斎藤は、ナ・リーグ最年長であり、メジャーでも3番目の高齢選手になった。
日本でも同期だった金本知憲選手、田口壮選手が現役引退を発表しているように、42歳は現役を続けていくのが難しい年齢なのも紛れもない事実だ。
2度目の故障者リスト入りでリハビリ中の斎藤がこんな話をしてくれたことがある。
「今年は投球を維持することより体調を維持するのが本当に難しく感じています。負傷箇所も筋肉そのものより、腱や骨の接合部分を痛めている。筋肉は鍛えることができますが、接合部分周辺を痛めてしまうのは明らかに老化現象ですね。
トレーナーに負傷箇所を治療してもらっても、次の日になると連結している他の箇所に張りが出始め、今度はそこも治療してもらうとまた違う箇所に異常が出てしまう。最近は治療だけで1時間以上もかかってしまい、治療だけで疲れてしまいます」
ずっと戦い続けている……右脚に抱えた古傷。
あまり知られていないことだが、実は斎藤は右脚に“異常”がある。
野手だった高校時代にスライディングに失敗し、右脛骨を骨折した過去を持つ。当時は整形外科での治療は一般化しておらず、斎藤も近くの接骨院で治療を受けたという。残念ながら骨が正常に接合しなかったのか、現在は右足首が外側に傾いてしまっている。もちろんリハビリなどまったく行なっていない。
そのため斎藤はランニングに相当の負荷がかかってしまう。
横浜時代に斎藤が負傷に悩まされたのも、コーチから他の選手同様にランニングを強要されたことにより、投球の軸足である右脚に疲労が蓄積され、結局は投球のバランスを崩し、肩やヒジを負傷してしまう、ということだった。
それを打破するため、個人的に右足首に負担のかからない身体作りと、トレーニングを取り入れ始めた。
その時期がちょうど横浜最終年からドジャース移籍と重なったため、メジャーへ移籍した途端、斎藤の球威が増したように勘違いされてしまった。
それだけに斎藤は現在も軸足のバランスに細心の注意を払っているが、その時々の体調や疲労具合でどうしても軸足のバランスを一定に保つのは難しくなってくる。
そこから生じる投球フォームのズレが身体の他の部分へ負担をかけ、年齢とともにそれが負傷として顕在化するようになってきたのが、現在の斎藤の姿といえるだろう。