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気迫と向上心の男・米満達弘。
男子レスリング復活を告げる金メダル。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto/JMPA

posted2012/08/13 11:40

気迫と向上心の男・米満達弘。男子レスリング復活を告げる金メダル。<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

男子レスリングでは、1988年ソウル大会以来24年ぶりとなる金メダルを獲得した米満。試合後、「ブルース・リーと宮本武蔵にはちょっと近づけた」と喜びを表現した。

場内からどよめきが起こった、決勝での豪快な大技。

 '09年の世界選手権で銅メダル、'11年の世界選手権では銀メダルと、世界のトップレベルの選手に成長した米満にとって、残る目標は、世界一だった。

 こうして迎えたロンドン五輪は、一戦一戦が山と言ってよい組み合わせになる。

 2回戦から出場となった米満の初戦の相手となったのは、昨年の世界選手権優勝のタガビ(イラン)を破って勝ち上がってきた同選手権3位のロペス(キューバ)。難敵との攻防を、2-0で制すと、3回戦のベラネス(カナダ)との試合を2-1でしのぎ、準決勝では昨年の欧州選手権王者のハサノフ(アゼルバイジャン)を2-0で破る。

 迎えた決勝のクマール(インド)との試合で、米満は本来の強さを見せつける。

 決勝の第1ピリオド、米満はタックルからバックを奪って1点。守りきってこのピリオドを奪う。白眉は第2ピリオドだった。開始約25秒、タックルで懐に入ると、そのまま持ち上げて叩きつけたのだ。大技に場内からどよめきが起きる。これで3点奪取。その後1点を返されたものの、それ以上の反撃を許さず、優勝を決めたのである。

「重たい。本当に重たいです。自分の首にかけるとは夢のようです」

「ひたすら攻めていこうと思っていました。とにかく自分を超えたいと思ってやっていました」

 気迫をみなぎらせて臨んだ試合後、米満はこう振り返った。その言葉通りの試合で得た金メダルについて、こんな感想をもらした。

「重たい。本当に重たいです。自分の首にかけるとは夢のようです」

 実は怪我で、寝技は満足にできる状態にはなかったという。その分、タックルに活路を見出そうとし、それが成功した。

 過去の自分と勝負し続け、上回ることで強くなり、とうとう、世界一にまでなった。

 それが米満達弘である。

 米満の金メダルは、かつて金メダルを量産してお家芸と言われ、その後、世界での地位を低下させてきた日本の男子レスリングの復活にもつながる、貴重な金メダルである。

 そして、日本が夏季オリンピックで獲得してきた通算400個目のメダルであり、アテネ五輪の通算37個を超える今大会38個目の、記念すべきメダルでもあった。

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