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“叩き上げ”の減少で、
勢力を伸ばす大卒力士。
~角界は“就職先”のひとつに!?~ 

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佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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posted2012/08/11 08:00

“叩き上げ”の減少で、勢力を伸ばす大卒力士。~角界は“就職先”のひとつに!?~<Number Web> photograph by KYODO

 日馬富士の全勝優勝で幕を閉じた、大相撲名古屋場所。幕下優勝は、白鵬の付け人も務める、元日大相撲部主将・アマ19冠の大器、山口だった。入門3場所目、髷の結えないザンバラ髪のまま、来場所の十両昇進が決定した。三段目優勝は、貴乃花部屋初の大卒力士、明大出身の渡辺だ。序ノ口優勝決定戦は、ともに木瀬部屋所属の日大出身・岩崎、近大出身・浜口の「同部屋東西大学」対決となり、熱戦の末、岩崎が制した。

 先の5月場所で4大関を倒し、注目された妙義龍も日体大出身。名古屋場所では新三役として2場所連続で技能賞を受賞した。十両力士28人のうち、実に13人もの大卒力士が番付を占めてもいた。幕内から序ノ口まで、学生出身力士の台頭に、目を見張らざるを得ない。

 少子化の影響もあり、中学卒の「叩き上げ」力士は、いまや貴重な存在となっている。「前途有望な中学生のスカウト合戦は、各部屋の奪い合いではなく、名門高校、大学との戦いだ。親が進学させてからプロへと“安全策”を取るんだよね」と親方衆は嘆く。付け人やちゃんこ番などの下積み経験もそこそこに、押しなべて出世が早い学生出身力士たち。

 その数が増えることで、角界に影響はあるのだろうか。元大学相撲部主将が語る。

上下関係は今や、プロの世界より大学相撲の方が厳しい!?

「個人競技といえど、大学相撲はチームでの団体戦が主体。年に数度の大会で、一戦一戦の重みと責任が大きい。目先の勝利に拘るあまり、はたきや引きなど安易な技に逃げ、プロ入り後もなかなかその癖が抜けない力士も多い。横綱大関となる夢を追うというより、角界を“就職先のひとつ”として考えてもいるしね」

 しかし、時津風部屋事件以来、鉄拳制裁の類は自重され、師匠や古参力士の「無理偏にゲンコツ」がまかり通らなくなった相撲界。大学相撲経験者の元関取が、「その点、今は大学のほうが上下関係は厳しいくらい。某名門相撲部では、主要大会の1カ月前から外出禁止令が出され、練習に集中するほど。僕の場合は、『プロの世界ってこんなものなのか』とも思ってしまった」と述懐するのだ。

 大卒力士の活躍は、プロの実力レベルがそれだけ下がっている証左ともなる。今となっては「唯一無二の日本の伝統文化」も、外国人とサラリーマン力士によって継承されていくほか、道はない。

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