ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
ベストメンバーでなぜ負けたのか?
関塚ジャパン、メキシコ戦の誤算。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2012/08/08 11:45
敗戦後、キャプテンの吉田はブログにこう綴っている。「ここまで中2日5試合。体が痛くないやつなんかいません。(中略)このチームのアホなやつらにショボくれた顔は似合わない。勝って終わろう」
今大会初の失点に、チーム全体が動揺してしまった。
「セットプレーで、早い時間に同点に追い付かれたのは、しんどかった。今大会で初めて失点してしまったことで、チームも動揺したし、動きも止まってしまった」
清武弘嗣は、そう言った。
体が動かない、守備が連動しない中、リードしたことで何とか保っていた精神的な優位性は、セットプレーからの失点で崩れた。ここから日本はズルズルとラインを下げてしまった。その下げたラインから出るボールをメキシコは再三、狙っていた。
後半20分、GK権田修一が扇原にボールを出したのも軽率なプレーだった。
扇原らボランチが狙われていたのは、前半から分かっていたことであるし、あの時は相手選手が扇原に近いところにいたのが見えたはず。チームとしてリスクマネジメントが徹底されていれば防げた失点だった。
勝負は、ここからだった。
だが、これまで追い掛ける展開がなかった日本は、落ち着いて攻撃をすることができない。関塚監督は、東に代えて杉本健勇を入れたが、永井を残しておくなど、ロングボールなのか繋いでいくのか、今ひとつ攻撃の狙いがハッキリしない。さらに宇佐美貴史、齋藤学を入れるが、前線に攻撃的な選手がダブつく状態になり、指揮官の迷いがそのまま試合に出てしまった。
トゥーロン国際大会優勝時の強いメキシコが、そこにいた。
一方、メキシコは狡猾だった。
しっかり守備のブロックを敷いて、ムダな体力を使わない。その一方で、ビルドアップに関わる扇原と山口螢のところには、激しいプレッシャーを掛けてパスミスやトラップミスを誘発させた。日本がリズムに乗れなかったのは、ボランチからのパスがなかなか通らなかったからでもある。
サイドからの崩しもお手本のような巧さだった。
日本はサイドアタックを警戒していたが、個人技術が高く、フィジカル的な強さのあるメキシコに数的優位を作られると止めることが出来なかった。加えて、運動量も落ちなかった。中2日と同じ条件で、前試合、延長戦を戦ってきたことなどまるで関係ないようなタフネスぶりを発揮。トゥーロン国際大会で優勝した時の強いメキシコが、この日のウェンブリーにはいたのだ。
「中2日でここまでやってきて、体力的にも精神的にもギリギリのところでやってきているので、みんなしんどかったと思います。その中でいかにミスを減らし、自分たちのサッカーをやるのかが課題だったんですけど、今日はそのふたつが出来なかったのが、勝敗を分けたのだと思います」
吉田は、敗戦をそう振り返った。