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<EUROの守護神たちを語る> 楢崎正剛のゴールキーパー論 「カシージャスは決して試合を壊さない」 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2012/07/18 06:02

<EUROの守護神たちを語る> 楢崎正剛のゴールキーパー論 「カシージャスは決して試合を壊さない」<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto
サッカーの華であり、試合の勝敗を決する「ゴール」。
チームの最後方で最後の砦となるゴールキーパーは、
最も直接にゲームの流れを左右する存在である。
元日本代表GKが、欧州の守護神たちを語り尽くす。

 名優がきっちり舞台を引き締めた。

 UEFAのテクニカルチームは、今大会のベストメンバーに3人のGKを選出している。カシージャス(スペイン)、ブッフォン(イタリア)、ノイアー(ドイツ)だ。異論を挟めない選考と言っていい。

 では、彼らの何が凄かったのだろう。大会を象徴するような、まどろみとうつつを覚ますようなビッグセーブを連発したから? 答えはたぶん「NO」である。

「大会全体を通して言えるのは、ミスによる失点はほぼなかった」

「大会全体を通して言えるのは、GKの明らかなミスによる失点はほぼなかった。『これは止めなきゃいけない』というシュートは、誰もがしっかり止めている。失点はどれも、『これはしょうがないかな』というもの。無駄がなくて、確実性を追求している」

 こう語るのは、楢崎正剛である。4度のワールドカップを経験し、J1歴代3位の出場数を誇る36歳の守護神は、優れたGKの条件に「スムーズさ」をあげた。

「チームによってやり方は色々で、GKの役割もひと括りにできないですが、全体をスムーズに動かしているかは気になります。キャッチングできないシュートを、どこに弾いているのか。キャッチしたあとのボールやバックパスを、どこへ、どのように、つないでいるのか。そういった判断が適切だと、ゲームにリズムを作ることができますから」

大ピンチに直面しても、淡々と処理するカシージャスの凄さ。

 個人をフォーカスすると、楢崎もテクニカルチームと同じ3人をあげた。なかでも「いいなって思う」のがカシージャスである。

IKER CASILLAS
1981年5月20日、スペイン生まれ。'99年、レアル・マドリーでプロデビュー。A代表通算137試合は同国史上最多、100勝を収めている。

「若い頃とは変わってきたな、というのがまずあって。10代後半とか20代前半の彼は、“とにかくシュートストップは任せとけ”という感じだった。いまは総合的にバランスの取れたGKになっているんじゃないかな」

 所属するレアル・マドリーでもスペイン代表でも、カシージャスは守備機会が少ない。EUROでは6試合のうち3試合で、相手のシュートが5本前後だった。GKからするとリズムを作りにくい状況下で、彼は見事なまでにミスを回避しているのだ。

「そう、ミスがないんですよ。大きなピンチにいきなり直面しても、淡々と処理している。第三者的には神がかったようなプレーも、彼にとっては普通なのかなって気がします。シュートを弾くなら、相手に拾われないところへ確実に持っていく。クロスボールに対して出るのかどうかの見極め、出るならそのタイミングと、キャッチするのか弾くかの判断など、すべてにおいてミスがない」

【次ページ】 「スペイン代表のGKは、簡単なようで難しい」理由。

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