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ゴールラインの機械判定が正式決定。
文明の利器はサッカーをどう変える? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byBongarts/Getty Images

posted2012/07/20 10:30

ゴールラインの機械判定が正式決定。文明の利器はサッカーをどう変える?<Number Web> photograph by Bongarts/Getty Images

写真は、今年7月にドイツで行われたテストの際にゴールの枠に取り付けられたゴールライン・テクノロジーのひとつ『ゴールレフ』のセンサー群。磁気センサーでボールの動きを正確に測定できるという。

 去る7月5日、スイスのFIFA本部で行なわれたIFAB(国際サッカー評議会)会合の席で、ゴールライン・テクノロジーの導入が承認された。サッカーの母国は、ゴール判定の近代化を大歓迎。同日のテレビでは、主なニュースの1つとして繰り返し報道され、翌日の国内各紙には、「歴史的」、「極めて重大」といった言葉が目立った。大衆紙大手の『デイリー・ミラー』などは、「サッカー界にも21世紀到来」との見出しでIFABの決定を讃えた。

 過剰と言えなくもない反応だが、無理もない。イングランドの人々は、導入を待ち侘びてきたのだ。例えば、2005年のマンチェスター・U対トッテナム(0-0)で目撃された、“笑撃”のノーゴールは、両軍の関係者とファンならずとも、いまだ脳裏に焼き付いているはずだ。ロングシュートで意表をつかれたロイ・キャロルは、見るからに慌ててマンUのゴールマウスに戻ったが、辛うじて間に合ったと思われたところで、まさかの落球。さらに狼狽して、倒れながらボールを掻き出したGKの上半身はゴールラインを超えていた。ところが、審判の目に、ボールはラインを超えていないと映った。

南アW杯の“幻のゴール”でブラッター会長も賛成派に。

 同年には、プレミアリーグ対決となったCL準決勝で、「幻のゴール」が勝敗を分けてもいる。クリアされた時点でラインを完全に割っていたかどうかが微妙な1点は、リバプールを決勝へと導き、最終的には欧州制覇を可能にした。片や、合計0対1で敗れたチェルシーでは、監督だったジョゼ・モウリーニョが「我々は両レグとも無失点だった」と言い続け、やり場のない怒りを露にしたのだった。

 今回の承認も、その背景には、ゴール判定に泣いたイングランド代表の存在がある。導入反対派だったゼップ・ブラッターFIFA会長の翻意は、2010年W杯でのドイツ対イングランド戦(4-1)がきっかけだ。1点差だった時点でフランク・ランパードが放ったミドルシュートは、バーの下を叩いて、ラインの1m以上奥に落下した。イングランドの同点ゴールは、記者席から肉眼でも確認できた。だが、肝心の審判は何故か確認できなかった。「ショックで目が覚めた。ランパードにお礼を言わなくては」とは、賛成派に改心したブラッターの発言だ。

 今夏のEURO2012では、ゴール判定の誤審がイングランドに味方した。決勝トーナメント進出をかけたウクライナ戦(1-0)、ジョン・テリーがライン上でクリアしたと見なされた敵のシュートは、実際にはラインを割っていた。メディアは、「これで2年前の不運と差し引きゼロだ」と、幸運を正当化しながら母国の勝利を祝ったが、そもそも、誤審の不運がないに越したことはない。

【次ページ】 2種類の判定システムの導入でコストの問題も解消。

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