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西武の大苦戦は当然なのか!?
リリーフ陣の分析で見えてきた病根。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byToshiya Kondo
posted2012/04/20 10:30
昨年の6月、クローザーに配置転換された西武・牧田和久は、22セーブを挙げる活躍で新人王にも輝いた。今年は先発に戻ったが、果たして安定した成績を残せるか。
つねに3、4年先を見据えて補強する、編成の慧眼。
今年は先発陣の流出だけでなく、長らく抑えを務めてきた馬原孝浩の右肩故障も発生した。しかし、「抑え不在の危機」という見出しがスポーツ紙に躍ることはなかった。馬原につなぐセットアッパーとして過去3年、防御率1点台を記録してきたファルケンボーグが昨年の日本シリーズで2試合抑え役を務め、馬原以上の安定感で中日打線を封じているのを知っているからだ。
ソフトバンクの強さを豊富な資金力に求める人が多いが、常に3、4年先を見越して弱点を補強する編成の慧眼こそ、賞賛されるべきだろう。
こういう備えは、林昌勇が故障してもバーネット、押本健彦がゲーム終盤を締めるヤクルトにも共通している。杉内、ホールトンと先発ばかり補強して、弱いとされていたリリーフ陣の手当てをせず、開幕ダッシュに遅れた巨人とは正反対の野球観である。
守護神候補・大石を先発で育成する西武の抑え軽視。
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リリーフ投手に価値を見出していないかのように見えるのが西武だ。'10年のドラフトでは大学時代、守護神として抜群の活躍を見せていた大石達也(早大)を1位で獲得し、多くのファンは、抑えはこれで最低7年は安泰だと思った。しかし、渡辺久信監督は大石を先発で起用すると表明し、実際そのような起用をファームで行なった。
'07年から昨年までの5年間に及ぶ、西武の抑え投手の成績を次に紹介しよう。
'07年5位 グラマン 40試合、4勝6敗17セーブ、防御率4.08
'08年1位 グラマン 55試合、3勝3敗31セーブ、防御率1.42
'09年4位 小野寺力 47試合、3勝5敗16セーブ、防御率3.98
'10年2位 シコースキー 58試合、2勝5敗33セーブ、防御率2.57
'11年3位 牧田和久 55試合、5勝7敗22セーブ、防御率2.61
抑え投手の成績とチーム成績が見事に合致しているのがわかる。今年はどうかというと、渡辺監督は新外国人のゴンザレスに抑えをまかせようとしているが、15日現在のところ5試合に登板し、防御率14.73と火だるま状態である。過去の例に照らし合わせてみれば、今年は優勝どころかBクラスに低迷してもおかしくない。