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ドイツ代表が背負う、
アウシュビッツの十字架。
~EURO開催地ポーランドで議論~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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posted2012/04/16 06:00

ドイツ代表が背負う、アウシュビッツの十字架。~EURO開催地ポーランドで議論~<Number Web> photograph by AFLO

 開幕まで約2カ月となったEURO2012。ウクライナではリビウのスタジアム周辺整備の遅延や、約3倍に高騰するホテル代など、運営面の問題が指摘されているが、共催国ポーランドでは別の議論が起きている。

 それが、ドイツ代表は大会中にアウシュビッツ強制収容所を訪問すべきか否か、というものだ。

 第二次世界大戦中、同収容所ではナチスにより110万人以上に及ぶ大量虐殺が行なわれた。ドイツ・ユダヤ人中央評議会のディーター・グラウマン氏は「ドイツは歴史上の責任を認め、世界にそれを示すために施設を訪れるべきだ。彼らの訪問は多くの記念スピーチよりも効果がある。来ないとすれば、それは信じがたいことだ」と訪問を強く求めている。

 大会中に哀悼の意を表することを決めているドイツサッカー協会だが、訪問となると問題も出てくる。それがキャンプ地からの距離だ。ドイツ代表はアウシュビッツから550kmも離れたグダニスクでの合宿を予定しており、訪問となれば1日がかりとなってしまう。ドイツ代表はウクライナで試合を行なうため日程の問題もあり、チームマネージャーのオリバー・ビアホフは「選手たちと協議しているが、未だ決まっていない」と話す。

イングランドやイタリア、オランダ代表も訪問?

 訪問すべきか否か、世論も様々だ。

 選手の士気が下がったらどうするのか。選手たちはホロコーストとは関係なく、訪問の義務はないとの意見もある。

 アウシュビッツ近郊のクラクフで合宿をはるイングランド代表はすでに訪問を決めており、同地に滞在するイタリア、オランダ代表がそれに続く可能性もある。イングランドやイタリアがアウシュビッツを訪問するのに、当事者のドイツはしないのか――。ドイツ代表にはそんなプレッシャーもかかっている。

 先日、ドイツでホロコーストについての世論調査が行なわれ、18~29歳の若者の21%が「アウシュビッツで何があったのかを知らない」と回答し波紋を呼んだ。

 ドイツ代表にとって様々な障壁はあるが、若者に絶大な人気を誇る代表チームがアウシュビッツを訪れることになれば、若年層の間で薄まりつつある負の歴史の知識が深まることは間違いないだろう。優勝を狙うドイツ代表は、サッカーだけでなく歴史の重圧も背負うことになる。

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