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ダルビッシュの“個人”能力。
~チームに関係なく活躍できる理由~ 

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小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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photograph byNaoya Sanuki

posted2012/04/08 08:00

ダルビッシュの“個人”能力。~チームに関係なく活躍できる理由~<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

慣れないマウンドやボールに苦しめられてきたダルビッシュだが、公式戦前最後の登板となった4月4日の練習試合では、4回を無失点に抑える好投。先発の4人目として9日(日本時間10日)のマリナーズ戦、いよいよ公式戦初登板を迎える。

 ダルビッシュ有の優れた点について、改めて強調する必要もないとは思うが、大リーグ公式戦デビューを前に 、いま一度、日本での実績を振り返っておこう。

 投手の実績について、よく使われるのは勝利数、勝率、防御率という3部門だ。しかしここでは、映画「マネーボール」でも紹介された野球統計学の面から、ダルビッシュの成長のあとを確認してみたい。というのも、勝利数や勝率は、味方打線やリリーフ投手の出来に大きく左右され、防御率もバックの守備力に左右されるため、投手個人の能力を反映した数字とは言えないからだ。ここではもう少し、個人の能力を反映した記録に注目したいのである。

 まず、野球統計学においては、先発投手の評価基準として最も重要な数字、ダルビッシュのQS率はどうか。QSはクオリティー・スタートの略。「質の高い先発登板」という意味だ。6イニング以上を投げて、自責点3点以内ならQSとして認められる。先発投手としての役割を果たしたと言える登板が、全先発の中で何%あったか、という数字だ。

奪三振数を与四球数で割った数値が表す投手の能力とは?

 ダルビッシュはこれが'08年88%、'09年87%、'10年84%、'11年96%と、4年連続で80%を超えている。これはずば抜けた成績で、別表を見ると分かるように、ほかには3年連続で80%を超えている投手さえ、誰もいない。最も近いのは田中将大だが、それでも'08年71%、'09年79%、'10年90%、'11年93%だ。

●野球統計学から見た日本プロ野球・主な投手の成績
選手名
(所属)
年度 防御率
三振
四球
四球率 三振率 本塁打率 QS率
ダルビッシュ有
(レンジャーズ)
'11 18 6 1.44 7.67 1.40 10.71 0.19 96%
'10 12 8 1.78 4.72 2.09 9.89 0.22 84%
'09 15 5 1.73 3.71 2.23 8.26 0.45 87%
岩隈久志
(マリナーズ)
'11 6 7 2.42 4.74 1.44 6.81 0.45 82%
'10 10 9 2.82 4.25 1.61 6.85 0.49 79%
'09 13 6 3.25 2.81 2.29 6.44 0.80 67%
和田毅
(オリオールズ)
'11 16 5 1.51 4.20 1.95 8.19 0.34 88%
'10 17 8 3.14 3.07 2.92 8.98 0.58 62%
'09 4 5 4.06 3.63 2.56 9.28 1.39 62%
田中将大
(楽天)
'11 19 5 1.27 8.93 1.07 9.58 0.32 93%
'10 11 6 2.50 3.72 1.86 6.91 0.52 90%
'09 15 6 2.33 3.98 2.04 8.11 0.62 79%
涌井秀章
(西武)
'11 9 12 2.93 2.63 2.07 5.45 0.45 65%
'10 14 8 3.67 2.85 2.48 7.06 0.96 59%
'09 16 6 2.30 2.62 3.23 8.46 0.51 82%
成瀬善久
(ロッテ)
'11 10 12 3.27 8.39 0.85 7.17 0.71 65%
'10 13 11 3.31 5.65 1.50 8.48 1.28 68%
'09 11 5 3.28 5.57 1.64 9.14 0.82 68%
杉内俊哉
(巨人)
'11 8 7 1.94 3.61 2.57 9.30 0.42 91%
'10 16 7 3.55 3.63 2.96 10.74 0.59 63%
'09 15 5 2.36 3.24 2.97 9.61 0.66 89%
吉見一起
(中日)
'11 18 3 1.65 5.22 1.09 5.66 0.38 88%
'10 12 9 3.50 4.60 1.44 6.61 1.09 56%
'09 16 7 2.00 4.45 1.57 6.99 0.48 84%
※QS率=クオリティー・スタート(6回以上を投げ自責点3点以内の先発登板)。赤字はタイトル獲得

 もう一つ、日本プロ野球ではあまり注目されていないが、奪三振数を与四球数で割った「三振/四球」という数値も、投手の個人能力を表す重要なデータだ。三振と四球は、バックの守備力とは関係がないという意味で、投手の個人能力を表す数値になる。

 ピッチングにおいて、三振は最も安全なアウトの取り方だ。打球が飛べば、野手の間にポトリと落ちる可能性はあるし、野手がエラーを犯す可能性もある。だから、特に塁上に走者がいる時は、三振でアウトを取るのが最も危険が少ない。したがって、投手にとって三振が取れる能力は重要である。

 しかし三振を取るには、ストライクからボールになる、落ちる変化球を決め球に使う投手が多い。打者が振ってくれば三振を取れるが、振らずに見送った場合、ボールになって四球になる危険性もある。三振が増えても、同じくらい四球も増えてしまっては、いいピッチングとは言えない。

 理想的には、四球が少なく、三振の多い投球がいいわけだ。ということは「三振/四球」が、大きい方が理想的な投球に近いということになる。一流の数字といえるのは4.0以上くらい。三振の数が四球の4倍以上なら、優れた投球と見てよい。

【次ページ】 “所属チームに左右されず活躍できる”裏付け。

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