野球善哉BACK NUMBER
MLBで通じない日本人内野手の守備。
人工芝のグラウンドも原因のひとつ!?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byAP/AFLO
posted2012/03/17 08:00
今季、ボストン・レッドソックスとのオープン戦でプレーしたミネソタ・ツインズのショート、西岡剛。昨シーズンの開幕前のように高評価を得られるか?
中日の井端も「土では早い準備が必要」と意識。
中日の名手・井端弘和にも、人工芝と土のグラウンドの違いを尋ねてみた。
「グラウンドの特長はそれぞれ違いますし、大きく変わることはないと思いますけど、土のグラウンドの方が、より早く準備するようにはしています。ただ、僕は人工芝のグラウンドでも、常にしっかり動いて、いい姿勢で備えるというのを心がけてはいます」
井端は土のグラウンドには早い準備が必要と認識し、人工芝であっても土のグラウンドだと意識してプレーしているという。これは井端の守備に対する意識の高さを示す言葉である一方、人工芝に慣れてしまう危険性を意識してもいる言葉である。
人工芝だと準備に余裕があり、大引の言葉にあるように腰が高くても簡単に捕れてしまう。つまりは、運動量の少なさをグラブさばきで補える時間的余裕があるようだ。この時間的余裕が、先述した「守備」と「打者走者の脚」の駆け引きを緊張感の無いものとし、内野手たちのスピードと技量を低下させているのではないか……。
土のグラウンドで何気ない内野安打を許していた西武・中島裕之。
昨オフ、メジャーとの契約に至らなかった西武・中島裕之のプレーで印象に残っている試合がある。
昨年、東日本大震災の影響で、滋賀県の皇子山球場で公式戦があったのだが、その時、中島はそう難しくない遊撃ゴロをいつものように捕球し、内野安打を2本許した。土のグラウンドである皇子山球場に不慣れなだけだろうとその時は深く考えなかったが、今思うとあのプレーはメジャースカウトの目にはマイナスにさえ映る可能性があったかもしれない。
「(日本のプロ球団に)入団した時は上手かった選手が、どんどん下手になっている」
メジャースカウトの間でささやかれていたこの言葉は、プロ野球の内野手の苦悩そのものを示している。ドーム球場と共に人工芝の面積も増え、天候に左右され難いことで試合中止が減ったことはコスト面で球団にはプラスに働いているわけだが、人工芝に慣れたプレースタイルが選手にとって足かせにもなっているという一面は否定できないだろう。
守備面でのスピード・瞬発性という課題を野球界全体の問題として考える時期に来ているのかもしれない。