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マリノス・木村和司は名将か?
「会見力」で試される監督の能力。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2010/03/26 10:30

マリノス・木村和司は名将か?「会見力」で試される監督の能力。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

大量得点での連勝で、采配も発言も絶好調の横浜F・マリノス、木村和司監督

 監督にとって、記者会見は力を試される場のひとつだ。

 うまくメッセージを発すれば、課題や改善点をチームの共通理解にできる。また、ときにはライバルチームを牽制する情報戦も可能だ。

 たとえば、オランダの名将フース・ヒディンク(ロシア代表監督)は、記者会見では「We(私たち)」という表現を意識的に使うことで、チームの一体感を作り出そうとしている。マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督は、あえてライバルチームの監督にケンカを売ることで、選手たちに「自分たち以外は全て敵だ」という意識を植え付けている。間違いなく彼らは、ヨーロッパを代表する「会見力」のある監督だ。

 では、「会見力」とは、具体的にどんな能力なのか? ポイントは3つある、と筆者は考えている。

1. 断言する力
2. わかりやすさ
3. 神秘性

 まず「断言する力」とは、監督がどれだけサッカー哲学に自信を持ち、反論を覚悟のうえで断言できるかということだ。サッカーは「再現性のないスポーツ」とよく言われるが、それを承知で、言い切ることができるのは一流の監督である。

オリヴェイラ監督のあまりにもパワフルな“断言力”。

 たとえば、鹿島のオズワルド・オリヴェイラ監督。彼はサッカーの本質にかかわることでも、躊躇せずに断言する。

「みなさんは、ただ点を取った、取っていないということを言われるかもしれないですけど、サッカーというのはチャンスを作るまでが一番難しい。その回数を作れていれば、チーム状態はいいということです」(第2節の京都戦後の会見)

「どんな相手でも我々がやるべきことには変わりはない。長所を出させずに消すこと、そして短所を突くことを、繰り返しやることです」(ACLのペルシプラ戦の前日会見)

 今あげたコメントにおいて、オリヴェイラ監督は<チャンスを作るまでが一番難しい>、<やるべきは長所を消して短所を突くこと>とはっきり言い切っていることがわかる。

 オリヴェイラ監督は、その理由をこう説明する。

「監督の一番の仕事は、これを全員でやれば必ず勝てるということを、選手に伝えることです。だから説明は一方的で、揺るぎないものでなければいけません」

【次ページ】 まだ“教授体質”が抜けてない? 京都の加藤監督。

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