野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
摩訶不思議なドラフト戦略に、
ベイスターズの明るい未来を見た!
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2011/11/07 12:20
横浜ベイスターズからのドラフト指名の報を受け、渡辺晃監督とガッチリ握手する古村徹選手。「指名がくるとは思いませんでした。ドラフトって8巡目まであるんだって感じ」と素直な感想を述べた古村
来季の球団名は「横浜DeNAベイスターズ」になるらしい。
「横浜でなー、本拠地は横浜でなー」という筆者を含む多くの人たちの怨念にも似た願いがこんな形で顕在化してしまったわけではないだろうが……いや、名前の是非はともかくとして、長かった球団譲渡問題も一応の決着を見ることとなり、漸く新しいスタートを切れるようになったのは単純に喜ばしいことだ。
とはいえ連日の報道では、情報が錯綜し過ぎて何を信じてよいやら混乱気味となっている感は否めない。本拠地は横浜、尾花監督は解任され、コーチは高木由一、木塚敦志らOB組が残留。球団社長には33歳の若者が来て、ベイスターズ愛溢るる加地球団社長は志半ばで退任。大のベイ党であるやくみつる氏も横浜ファンを辞めると言い出し、何故かクロマティが監督に名乗りを上げるわ、本体は同業のGREEに訴えられるなんて話が出るやら、ガッキーはモバゲー関連の新CM発表会で意味不明のベイスターズの質問を飛ばされるやらなんやらで、見ている方はヤキモキモヤモヤ。
この先も監督人事、村田のFA引き留め、ホッシーの処遇など懸案事項が山ほどあることを考えると、当分の間はこんな感じの安堵と不安が交錯する日々が続いていくのであろう。
「来季を放棄して7年先を見越したんだろうね」
それらが発表される前の10月27日。旧体制での最後になるかもしれない大仕事、ドラフト会議が行なわれた。日本ハムが菅野を指名して大きな波紋を呼んだ影響であまり目立ちはしなかったが、ベイスターズはこの席上で謎のドラフト戦略を行っている。会議を見守っていた知り合いの記者などは笑いながらこんな感想を漏らしていた。
「今回のドラフトではソフトバンク、中日、横浜が意識的に高校生を獲得していたけど、当面の間は現有戦力で戦える優勝した2チームならまだしも、現有戦力すらままならないベイスターズが即戦力を獲らずに高校生ばかりを指名するのはすでに来季を放棄して、7年先を見越したんだろうね」
そうなのである。今回の横浜のドラフト指名選手は12球団最多の9人を指名(他に育成が2名)。そのうち7位の松井飛雄馬(三菱重工広島)以外8人が高校生という徹底した、いやさ極端すぎる指名を行っている。ちなみに前年は高校生指名ゼロ。この右から左へ見事に振りきったドラフト戦略は、アマチュア野球音痴の筆者から見ても、「藤岡(東洋大)を外してヤケになったのか」とも思えてしまう。このドラフトを、ある大物OBはこんな分析をしていた。
「これまでのドラフト指名を見ても分かるように、ベイスターズは“必要な戦力”ではなく、“来てくれる選手”を優先的に指名してきている。もっと攻めていかないといけないんだろうけど、今は親会社が不安定な状態ですし、有望な選手たちからいい返事が貰えない、監督が決まらないので即戦力は獲りづらい、お金も掛けたくないという台所事情もあるのではないか」